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基礎知識基礎知識

銀行預金債権差押による債権回収

2012.03.27

勝訴判決を得ても支払を受けることができない?

請求を認容する判決(勝訴判決)を得ても相手方が任意に支払に応じるとは限りません。
むしろ訴訟提起前の交渉で話し合いがまとまらず、訴訟手続の中での裁判上の和解もまとまらないからこそ判決にまで至ったという場合が多いといえますので、勝訴判決を得ても相手方の任意の支払が得られる場合のほうが少ないとさえいえます。
そのため勝訴判決の内容を実現するためには、相手方の財産に強制執行手続をとることが必要となります。

銀行預金債権に対する差押手続のメリット

求めていた給付内容が金銭である場合には、相手方の財産に強制執行を行うことで判決で認められた権利の実現を図ることとなります。
強制執行の対象は相手方が不動産を所有している場合には不動産に対して強制執行を行うこともありますが、手続のために裁判所に予納する費用が高額となるなど利用しにくい面があります。
そのため、手続費用が比較的少額で足りる債権差押を判決内容の実現手段として選択することが実際には多いといえます。
債権差押の中でも、相手方が勤務先に対して有する給料債権を差し押さえる場合、勤務先が相手方にたいする同情心などから差し押さえた給料債権の債権者に対する支払を拒む場合があり、その場合には結局勤務先に対して取立訴訟を提起しなければならなくなることとなります。
その点、銀行預金債権に対する差押えは、差押が成功した場合に支払を受けることができないというおそれがなく、他の債権差押より回収確実性が高いといえます。
そのため銀行預金債権に対する差押は、取引銀行とその支店が判明している場合や相手方の取引銀行・支店が思い当たる場合には第一次的に検討する差押対象といえます。

銀行預金債権に対する差押えの準備

差押手続を行うにあたっては、まず前提として強制執行の根拠となる「債務名義」が必要となりますので、債務名義を取得していることの確認がはじめに必要となります。
債務名義と認められている主なものとしては、「確定判決」、「仮執行の宣言を付した判決」(確定判決や仮執行の宣言を付した判決については「民事訴訟(第一審)の基礎知識」もご参照下さい。)、「仮執行の宣言を付した支払督促」(支払督促については「支払督促を利用した債権回収」もご参照下さい。)、「金銭の支払いに関する執行認諾文言付公正証書」(執行認諾文言付公正証書については「公正証書の基礎知識」もご参照下さい。)が挙げられます。
債務名義を取得していることの確認ができましたら、次は相手方が預金債権を有している取引銀行とその支店を調査し、差押手続の対象を決定します。
もっとも、「調査する」と簡単に述べましたが、トラブルとなってから相手方の取引銀行とその支店を調査することは困難を極める場合もありますので、可能であればトラブルとなる前の関係が良好な段階から、万一の債権回収手続に備えた対応が重要といえます。

銀行預金債権に対する差押手続の概要

ここでは銀行預金債権に対する差押手続の概要を説明します。
もっとも銀行預金債権以外の金銭債権に対する差押手続も手続の流れは同様ですので、一般的な金銭債権差押手続の説明としても参考にして下さい。

裁判所に対する差押申立

債権差押命令申立書、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録を作成し、「執行力ある債務名義の正本」と送達証明書等の執行開始要件を証明する文書を添付する必要があります。
また、債権差押の申立を行うにあたって注意すべきことの一つに、「陳述催告の申立」を忘れずに行うということが挙げられます。
「陳述催告の申立」とは、第三債務者に対して被差押債権の存否、種類、金額や支払意思の有無等について2週間以内に書面で回答すべき旨の催告をいい、これに対する第三債務者の回答を受けることで差押の成功不成功を判断し、その後の手続選択を検討することが可能となる制度です。

差押命令の銀行支店への送達

差押えの効力が生じ、債務者への弁済が禁じられることとなります。
仮に第三債務者が差押の効力を無視して債務者に対して弁済をしてしまった場合にも、債権者は当該弁済の事実に関係なく第三債務者に対して差押債権の弁済請求をすることができ、第三債務者は二重払いの危険を負うこととなります。
第三債務者が銀行である場合、銀行は差押の法令にも精通しているため、差押命令送達後に債務者に対する弁済が行われることはないといえます。

差押命令の債務者への送達

債権差押命令が債務者に送達されると(民事執行法第145条第3項)、裁判所書記官から債権者にその旨と年月日が送達通知書によって通知されます(民事執行規則第134条、第179条第2項)。
民事執行法は「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。」(民事執行法第155条第1項本文)と規定し、債務者への送達後1週間が経過した場合には債権者の第三債務者に対する取立権が発生する旨定めていますので、債権者は、上記の送達通知書を第三債務者である銀行に対して提示し、取立権を行使することとなります。

銀行に対する取り立ての実行

取立の方法については法律や規則に特段の定めはありませんので、債権者から銀行に連絡を取り、支払いの方法について協議します。
実際には債権者が必要書類を銀行に提出し、債権者名義の銀行口座に振り込んでもらう方法が一般的といえます。
銀行を第三債務者とすることのメリットとして、取り立ての実行でトラブルとなることがほとんどないという点が挙げられます。銀行は債権者が必要書類を提出しさえすれば、取り立てを拒むことはないからです。

取立届の提出

銀行から差押債権全額の支払いを受けたときは、債権者は裁判所に対して取立届を提出する必要があります(民事執行法第155条第3項)。
取立届には、「事件の表示」、「債務者及び第三債務者の氏名又は名称」、「第三債務者から支払いを受けた額及び年月日」を記載する必要があります(民事執行規則第137条)。