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ブログブログ

レイチェルと嫡出推定

2014.04.14

『glee』

みなさんはアメリカの大人気ミュージカルドラマ『glee』をご存知ですか。

私は,先日弁護士の友人達に勧められてみはじめたのですが,とても楽しくてかわいくて完全にはまってしまいました。仕事後に見始めるととまらないため,毎日プチ寝不足状態です。ちなみに私の好きなキャラクターはフィンとカートです。

とにかくみてるだけでハッピーな気持ちになれるとても素敵なドラマなので,皆様もぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

ところで,『glee』のヒロインであるレイチェルは,代理母出産によって生まれ,ゲイカップルのもとで育ったという設定です。3月17日のブログで嫡出推定の話をしましたが,レイチェルの場合,当該ゲイカップルの嫡出推定は果たして及ぶのでしょうか。日本の法律,判例に照らして検討してみたいと思います。

 

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

日本には,「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」という法律があり(以下「特例法」といいます。),同法3条1項では,家庭裁判所は,ある一定要件を満たす場合,その者の請求により性別の取扱いの変更の審判をすることができるとされています。

性別取扱変更の審判があると,変更後の性別と異なる性別(生物学的には同性)の人と結婚をすることができることになります。

では,性別取扱変更の審判を受けた元女性(変更後は男性)と結婚した女性が,婚姻中に懐胎した場合,生まれた子どもに嫡出推定は及ぶでしょうか。

この問題について,平成25年12月10日,最高裁判所により1つの判断が下されました。

最高裁第三小法廷 平成25年12月10日決定

本件は,特例法3条1項に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けたAと結婚したBが,夫であるAの同意の下,夫以外の男性の精子提供を受けて人工授精によって懐胎し,Cを出産したという事案において,区が,Cが民法772条による嫡出の推定を受けないことを前提として,戸籍上Cの父の欄を空欄とした(Aを父と記載しなかった)ことについて,AとBは戸籍の訂正を求めました。

最高裁は,Cは,妻であるBがAと婚姻中に懐胎した子であるから,夫であるAが特例法に基づき性別変更の審判を受けたものであるとしても,民法772条によりAの子と推定されるから,Cについて嫡出子としての戸籍の届出をすることは認められるべきであると判断しました。

レイチェルはどうなるか

では,レイチェルも,日本にいた場合は当該ゲイカップルの嫡出子として推定されるでしょうか。

答えは,現行法では×であると考えられます。これには大きく2つの理由があります。

I レイチェルの両親は,2人とも性別適合手術を受けていなさそうであり,この場合日本では法律上婚姻することができないため

 性別取扱変更の審判を受けるためには,「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」及び「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」が必要であり,これはつまり,性別適合手術を受ける必要があるということです。レイチェルの両親は,2人とも男性の外観であり,性別適合手術を受けてはいなさそうですので, 性別取扱変更の審判を受けられないことになります。現行の日本法では同性は結婚することができないところ,嫡出推定は婚姻を要件とするため,そもそも嫡出推定規定が適用されないこととなります。

II 嫡出推定は「妻の懐胎」を要件とするところ,現在の医学では生物学上の男性が懐胎することは不可能であるため

 民法772条は,「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定しているところ,男性は現代の医学では懐胎することはできませんし,また,レイチェルも代理母の懐胎により生まれた子ですので,同条には当てはまらず,嫡出推定は及ばないことになります。

以上のとおり,レイチェルには,ゲイカップルの両親の嫡出推定は及びません。レイチェルの親子関係が法律上はどうなっているのかはわかりませんが,おそらく養子縁組をしているのだろうと思います。