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証言台に立つ犬

2014.04.13

殺人事件の犯人特定のために犬が証言台に・・・フランスの裁判にて

4月10日のgooニュースでこんなニュースを見付けました。

「フランス中央部に位置するトゥールで、喧嘩が殺人事件に発展。その現場にいた、被害者の飼い犬である9歳のラブラドール・レトリバーが、唯一の目撃者(犬)として裁判へ出廷。証言台に立った。
 検察側が証人として裁判へ出廷させた犬は容疑者と対面。飼い主を殺害した犯人か判断するため、“被告がバットを振り上げて犬を脅し、その反応を観察する”という実験が行われることに。
 比較対象として、同年齢のラブラドール・レトリバーをもう1匹連れてきてこの実験が行われたが、2匹とも犯人を識別する様子が見られなかったことから、容疑者を犯人と特定する材料には至らなかった。」
裁判の証言台に犬が立つ姿を想像すると何だか微笑ましい気もしますが、もしこれが日本の裁判だとしたら同じようなことは起こりうるのでしょうか?
SaraSephia

日本の刑事裁判ではどのような証拠が認められるのか?

上記のフランスのニュースについて若干の補足をしておくと、おそらくですが、犬を「証人」として扱っているわけではなく、犬の反応という「事実」を犯人特定の材料とする一種の「検証」の手続として行っているものと考えます。

それではまず、日本の刑事裁判ではどのようなものが証拠として認められるのでしょうか?

刑事裁判について定める刑事訴訟法の第317条は「事実の認定は、証拠による。」と定め、また同法第318条は「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。」と定めていますが、証拠の方法について特に制限があるわけではなく、目撃者の証言、犯罪の痕跡となる物証、現場検証の結果など色々な形の証拠が認められています。

証拠の方法に制限がないと言うと、それではどんなものでも証拠として裁判に提出して良いのかという話になりますが、流石にそのようなことはなく、刑事訴訟法に明文の規定はないものの、「要証事実を推認させる必要最小限度の証明力(証拠の価値)」を持たない証拠は「証拠能力を欠く」ものとして認められません。また、違法な捜査方法によって得られた証拠なども一定の条件の下では証拠能力を欠くものとされ、裁判に提出することができないこととなっています(他にも証拠として認められない類型のものがありますがここでは省略します)。

犬の反応は証拠となるか?

さて冒頭のニュースに戻りますが、犬の反応によって犯人を識別するという方法は日本の裁判では認められるでしょうか。

一口に犬と言っても、例えば麻薬捜査犬のように特別な訓練を積んだ犬であれば麻薬の識別についての反応等が証拠となることは考えられます。

しかし一般家庭で飼っている犬の反応ということになると、一定の条件の下で一定の反応を示すことが必ずしも期待できず、例えば被告人に対して激しく吠えたりうなったりしたとしても、その事実を根拠に被告人が犯人であると推認することはできないのが通常ではないでしょうか。

そうだとすると、その犬が家庭で飼われている普通の犬である場合、犬の反応をもって犯人を識別する証拠とすることは認められない可能性が高いと思われます。

また仮に証拠能力が認められ裁判に証拠として出すことまではできるとしても、フランスの裁判の結果がそうであったように証明に失敗することも多いでしょうから、日本の裁判で検察官や弁護人が証拠として請求するというケースは考えにくいでしょうね。

 ただ犬好きの人間の一人としては日本の裁判所でも犬が証言台に立つ姿を見てみたいなあとは思います。