メニューを開く  メニューを閉じる
2017/03/01 日比谷ステーション法律事務所の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください
Google+
ブログブログ

自転車事故で人生を棒に振らないために

2014.02.04

 弁護士の千葉貴仁です。

 僕は毎日事務所に電車で通勤しているのですが、最近では、ギュウギュウ詰めの満員電車を回避したり健康増進のために通勤通学に自転車を利用する方が増えているようですね。とりわけ首都圏では、東日本大震災以降、自転車はいざというときの交通手段ともなるため、通学通勤で自転車を利用する方が急激に増えたそうです。僕の知り合いの弁護士の中でも実際に自転車で毎日通勤している方もいます。

 しかし自転車利用者の増加に伴い、自転車に関連する事故の件数も急激に増加しています。警視庁の統計によれば、ここ10年間で、自動車事故を含めた全交通事故件数は10年前の約80%にまで減少している一方で、自転車対歩行者の事故総件数は約1.5倍に増加しています。

自転車事故も「交通事故」

 自転車は、悪天候の日を除けばいつでも乗ることができますし、小さな子供から大人まで気軽に乗ることができるとても便利な乗り物です。自動車と違って運転免許を取得する必要もありません。しかし他方で自転車は、道路交通法上の「軽車両」(同法2条1項11号)に該当し、自動車と同様に「車両」(同条1項8号)に含まれますから、道路交通法上の規制を受けますし(過労運転や酒気帯び運転も処罰の対象となります。)、また自転車を運転して人の死傷や物の損壊を生じさせた場合には「交通事故」(同法67条2項)となります。

意外と重い自転車事故の損害

 では、自転車に乗って歩行者に衝突した際、どの程度の損害が生じるのでしょうか。自転車は軽量ですし、制動距離も短く急ブレーキをかければピタッと止まりやすいので、接触してもそれほど重大な事故は生じないと考えている方も多いと思います。

 しかし、自転車は、自動車に比べれば軽量ですが(とはいえ、いわゆるママチャリでも約20kgあります)、これに運転者の体重とスピードが加われば、人に重傷を負わせるには十分過ぎる凶器になります。実際に、自転車と接触した衝撃で歩行者が地面に頭部を打ちつけるなどして死亡に至り、裁判で数千万円から1億円程度の賠償が認められたケースも多数発生しています(インターネットで「自転車事故」「死亡」等の単語で検索してみてください)。

 事故態様としても、正面衝突や追突による直接的な接触に限らず、自転車が歩行者の脇を通り抜ける際に、歩行者の衣服や鞄の紐などに自転車の一部が引っかかり、歩行者が引きずられて転倒し電柱や壁や別の人間に体を打ち付けるというような場合など、様々な事故態様がありえます。

歩道は歩行者と自転車が行き交う危険な場所

 車道と歩道・路側帯が区別されている道路では、自動車は車道を走り、歩行者は歩道等を歩きます。そのため歩行者は、歩道等を歩いていさえすれば、自動車が居眠り運転や飲酒運転等で暴走して歩道等に突っ込んだりしない限り、いきなり自動車に轢かれるようなことは基本的にはありません。

 この点、自転車はというと、道路交通法上は原則として車道を走行しなければなりませんが(同法17条1項)、実際には、自転車が歩道上や路側帯上を走行していたり、逆に歩行者が自転車道を歩行しているため、自転車と歩行者が同じ通路を走行(歩行)することはよくありますし、僕自身、自転車が歩行者の数センチ脇をスピードを落とすことなくスリ抜けて行く場面をたびたび見かけます。

 また、歩行者は、常に真っ直ぐ歩いているわけではなく、電柱等の障害物や他の歩行者等にぶつからないために左右に動いたり、考え事をして突然立ち止まったり、本人は真っ直ぐ歩いているつもりでもスマホを見ながらフラフラ歩いていることもあります。特に子供は歩きながら(遊びながら)急に横に飛び出すなど、自転車側からみて不規則な動きや予測不可能な動きをすることがままあります。自転車は、自動車と違ってエンジン音はありませんし、音楽を聴きながら歩く歩行者もいて、自転車が通り過ぎるまで自転車の接近に全く気づかない歩行者も多いでしょう。さらに、(これは自動車の運転者にも共通する心理だと思いますが)歩行者も自転車運転者も、客観的には歩道等に上記のような危険があるにもかかわらず、「きっとぶつからないだろう」とか「相手の方がよけてくれるだろう」とか「自分は事故は起こさない」という根拠のない漠然とした自信を持っていたり安易な思い込みをしている方もいると思います。

 このように 、歩道や路側帯は、自転車と歩行者が接触する潜在的な危険性が常に存在する場所であるにもかかわらず、そのような認識が十分に浸透していない場所といえると思います。

交通事故は被害者にも加害者にも不幸なもの

 一度事故が起きてしまえば、被害者は損害賠償金では癒えることのない肉体的・精神的損害を負いますし、加害者としても莫大な額の損害賠償責任や刑事的責任を負うことになります。また、示談や裁判によって損害賠償額が確定するまでの間は、被害者にとっても加害者にとっても、相手方と示談交渉しなければならないストレスや裁判がどのような形で終結するのかという不安と戦わなければならず、このような副次的な被害に長期間にわたって晒され続けなければなりません。

 仮に、示談や裁判で損害賠償額が確定したとしても、加害者に十分な資力がない場合には、被害者は十分な金銭的救済を受けることはできません。加害者としても無い袖は振れません。他方で、莫大な損害賠償責任を負うことになった加害者も、その後の人生において経済的にも精神的にも苦しみ続けることにもなりかねません。

自転車事故と保険

 このような場合に備えて加入しておくべき自衛手段が保険です。しかし、自動車の場合には、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の強制加入制度が確立していますが、自転車の場合にはこのような強制加入保険は現在のところ存在しません。そのため、自転車の所有者等が自ら付保して自衛しなければなりませんが、実際に、保険に加入している方はどれだけいるでしょうか。

 先日の日本経済新聞には、埼玉県越谷市にある某自転車メーカーが、保険金額の上限が1億円の個人賠償責任保険付きの自転車を今月(平成26年2月)から発売するという記事が掲載されていました。自転車メーカーがこのようなサービスを扱うのは国内初だそうです。進学や入学で自転車を購入する顧客を想定しており、1台あたり数百円の保険料は、この自転車メーカーが全額負担するそうです(このサービスは1年間限定)。

 このような私企業による保険付き自転車の販売は、不幸にも自転車事故に遭遇した被害者の金銭的救済の一助となりますし、まだまだ十分には認知されていない自転車事故の危険性や保険の必要性を国民に啓発するとても良い試みだと思います。

 ただ、これも現時点では一部の私企業による対症療法的な施策にとどまるものであり、自転車事故の被害者が少しでも早く損害に見合った金銭的救済を得られ、かつ加害者が必要最小限の負担で済むよう保険加入率を抜本的に改善するためには、自動車の場合と同様に、保険の強制加入制度の確立が必要なのかもしれませんね。

日比谷ステーション法律事務所は自転車事故の相談を受け付ける専門サイトを立ち上げました。
自転車に轢かれた歩行者、自転車同士の事故の被害者の方など、自転車に関係する事故に遭われた方はご相談ください。

自転車事故相談サイト