平成17年度の交通人身事故の発生件数は93万3828件で,死者数6,871人,負傷者数115万6633人となっています(平成18年度交通安全白書)。交通法規の規制強化に伴い交通事故による死傷者数は年々減ってきてはいるものの依然として多くの死傷事故が発生しています。
交通事故はある日突然起こるものであり,どうしていいか分からないまま保険会社との交渉が開始する場合も少なくありません。加害者や保険会社の対応に不満を感じたり,損害賠償額の提示に対して,それが妥当な金額なのか判断に迷うことも多いと思います。
不幸にして交通事故の被害に遭われてしまった以上,ご自身が交通事故に関する知識を深め,今後についてご自身で決定していく必要があります。傷害を受けた場合には,まずは治療に専念していただく必要がありますが,その後,被害に対する賠償を得る手段として民事賠償請求を検討することになります。
弁護士は,裁判という強制力によって損害賠償を実現し得る最も有力な専門家であると言えます。被害に対して納得できる損害賠償を得るために,弁護士に依頼することを検討して下さい。
交通事故による損害賠償請求には多くの論点がありますが,大きく分けて以下の問題があると理解しておくとよいでしょう。
(1)誰に請求できるのか(請求の相手方の問題)
(2)どのような損害についていくらまで損害賠償請求できるのか
(損害賠償の範囲と損害額の問題)
(3)被害者側の落ち度によって賠償額が減少させられるか
(過失相殺の問題)
一般に加害行為に対する損害賠償請求では加害者が請求の相手方となりますが,交通人身事故による損害賠償請求では原則として運行供用者が請求の相手方となります。なぜなら,自動車損害賠償保障法では,人身事故については運行供用者に過失がなくても損害賠償責任を負う一種の無過失責任を課しており,それに対応して強制保険制度(自動車損害賠償責任保険・自動車損害賠償責任共済)が導入されているからです。
運行供用者が具体的にどのような者かということは問題となりますが,多くの場合では,任意保険会社が示談交渉を代行することとなります。
損害には,人身損害(死亡・傷害)と物損があり,それぞれに財産的損害と精神的損害(慰謝料)があります。さらに,財産的損害には被害者が実際に支出をした損害である積極損害と被害者が事故に遭わなければ得られたであろう利益を失った損害である消極損害があります。さらに,訴訟を行った場合には,弁護士費用も損害賠償の範囲に含めることができます。
| 人身損害 | 財産的損害 | 積極損害 | 治療費等 |
| 消極損害 | 休業損害,逸失利益 | ||
| 精神的損害 | 慰謝料 | ||
| 物 損 | 財産的損害 | 積極損害 | 修理費 |
| 消極損害 | 休車損害 | ||
| 精神的損害 | 慰謝料(特別な場合のみ) |
具体的にどのような損害が請求しうるかについては,被害類型ごとに別で詳しく説明します。
交通事故による損害額が確定したとしても,被害者側の過失が認められる場合にはその賠償額は減額され,具体的には以下のような算式で損害賠償額が決定されます。

過失割合については,認定基準が示されている書籍が存在します。しかしながら,認定基準を適用する前提として,また個々の事案に沿った解決という点から,何よりもまず事故態様がどのようなものであったのかをできる限り正確に把握することが重要となります。