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現在(平成23年11月)、オリンパス社において、平成23年10月14日の外国人社長の解任問題に端を発して、ケイマン諸島のオフショア(国内法規制回避が可能な特別法域)を利用したM&Aアドバイザリー報酬の高額支払い、20年間にも及ぶ証券投資による損失の穴埋めのための粉飾決算の事実が明らかになりつつあります。事実関係の詳細は、オリンパス社が設置した第三者委員会や証券取引等監視委員会(SESC、Securities and Exchange Surveillance Commission)による調査結果を待つ必要があります。
かかる事件の結果、オリンパス社の事業に悪影響が及び、売上の大幅な減少につながればリストラにより従業員にしわ寄せが及ぶ可能性があります。また、すでにオリンパス社の株価の大幅な下落が起こっており、オリンパス社が上場廃止に至ればオリンパス社の株主は莫大な損害を被ることになります。
そこで、本稿ではオリンパス社の事件を念頭に株主代表訴訟の手続の概要を説明します。
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下「役員等」といいます。)は、その任務を怠ったときは(任務懈怠(けたい))、株式会社に対し、これによって生じた損害を連帯して賠償しなければなりません(会社法第423条第1項、第430条)。上記1.で述べたように事実関係の詳細は第三者委員会やSESCの調査結果を待つ必要があり、任務懈怠の有無や損害額は裁判における立証可能性も視野に慎重に検討する必要があります。オリンパス社の役員等に任務懈怠が認められる場合は、オリンパス社の役員等はオリンパス社に対し損害を賠償する連帯責任を負うことになります。
上記2.の役員等の損害賠償責任は、本来、株式会社の現在の監査役が株式会社を代表して訴訟提起をするのが原則です(会社法第386条第1項)。しかし、被告となる役員等と原告を代表することになる監査役は、例えば数十年に渡って同じ釜の飯を食ってきた仲間であることもあり、監査役は役員等に対する訴訟提起を躊躇、手加減することも懸念されます。そこで、会社法は株主のイニシアティブ(主導権)による役員等に対する訴訟提起を促すため、6ヶ月以上前から継続して株式会社の株式を保有している株主に、株式会社に対して書面等により役員等の責任を追及する訴えを提起することを督促(請求)する権利を認めています(会社法第847条第1項本文)。
上記3.の株主からの督促(請求)にもかかわらず、なお監査役は役員等に対する訴訟提起を躊躇することも懸念されます。そこで、上記3.の督促(請求)の日から60日以内に株式会社が役員等に対して訴訟提起をしない場合には、当該株主が株式会社を代表して役員等に対して訴訟を提起することができます(会社法第847条第3項)。
なお、上記3.の督促(請求)の日から60日以内に株式会社が役員等に対して訴訟提起をしない場合には、株式会社は当該株主に対し、遅滞なく、訴訟提起をしない理由を書面等により通知しなければなりません(会社法第847条第4項)。
かかる訴訟の管轄は株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所に専属することになります(会社法第847条)。オリンパス社の場合は東京地方裁判所に訴訟を提起する必要があります。
裁判所に提出する訴状に貼付する印紙代は1万3000円で足ります(会社法第847条第6項、民事訴訟法第8条第2項、民事訴訟費用に関する法律第4条第2項)。本来、例えば10億円の損害賠償訴訟を提起する場合、302万円の印紙を貼付する必要があります。しかし、個々の株主による株主代表訴訟の提起を容易にするため、会社法は上記の特則を認めています。
株主代表訴訟は、上記で述べてきたように、株式会社が役員等に対して有する損害賠償請求権を株主が代わりに訴訟で争うというものです。
これとは別に、有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載があるとき等には、株主は自らが被った株価の下落等の損害を、直接、役員等に請求することが可能です(金融商品取引法第21条の2、第24条の4、第22条)。この点については、下記をご参照下さい。