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初めてのテレビ取材!~最近の交通事故~

2016.04.15

初めてのテレビ取材

少し遡りますが,私(千葉),近年急増する自転車事故について,2月8日にNHK高知放送局様から取材を受けました。

撮影された映像は,2月10日にはNHK高知放送局の「高知情報いちばん」という番組で放送され(編集早い!),その後,同じ映像が高知県以外の四国3県でも放送されました。私自身,大学時代にテレビ局でアルバイトをしていましたが,撮影される側に立つのはもちろん初めての経験でした。そのため,焦りと緊張で解説を噛み倒しましたが,NHK様の魔法(編集力)のおかげで,私は,映像上,全く噛んでいないようでした。

取材では,弁護士の立場から見て,自転車事故の相談が近年急激に増加していること,自転車事故自体の危険性(重傷事故や死亡事故も発生していること),自転車保険の認知度・加入率が低いことにより事故発生後の被害者の救済が不十分なものとなっていること,保険未加入の加害者が高額な損害賠償金の支払いに窮し,破産するケースもあること等,自転車事故によって発生する現実的な問題点について,僭越ながら,簡単に解説をさせていただきました。

近時の交通事故訴訟の統計

さて,少し話は変わって,交通事故を扱う法曹関係者・損害保険会社担当者のバイブルである「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2016」(上・下巻)が,例年どおり,2月初めに発売されました。表紙が赤いので,通称「赤い本」と呼ばれています。この赤い本の上巻には,裁判で認められる各損害項目ごとの認定基準・関係裁判例等が多数掲載されています。

そして,赤い本の下巻には,平成27年10月24日に行われた,東京地方裁判所民事27部(交通事故専門部)の裁判官による講演録等が掲載されていて,その中では,同部に係属している訴訟の平成26年度の処理件数等の統計,裁判所から弁護士に対する要望,その時々の旬な論点に関する裁判官の解説が掲載されています。

赤い本(下巻)

 

弁護士の中には,損害の裁判基準が掲載されている上巻しか読まない人もいるようですが,下巻には,上記のような実はかなり重要な最新情報が多数掲載されていて,実際,私も下巻の解説を読んで,当時事件処理で悩んでいたポイントの解決指針が掴めたり,実は裁判官から見ても難しい問題・争点だとわかり勝手に安心したという経験があります。私は,毎年この講演会に出席して生の報告は聞いてはいますが,詳細なデータ・解説が記載されている赤い本下巻を紙面で読むことを密かに楽しみにしています。

統計的には,毎年,交通事故の発生件数自体は減少しているにもかかわらず,民事27部での新受事件数は一貫して増加しているという現象が起こっているようです。この原因について,民事27部からは,経済情勢,権利意識の変化,弁護士費用特約の存在,高次脳機能障害の有無等の複雑な問題点を含む事件の増加などが考えられる,と報告されています。

また,最近の赤い本の下巻では,毎年,自転車事故のことについて触れられていることも特徴的です。最新版の下巻でも「自転車が加害車両となる交通事故が社会問題化していますが,自転車同士の事故や自転車と歩行者との事故が相当数係属しています。」と報告されています。私などにもテレビ取材が来る由縁です。

審理の効率化・迅速化

赤い本のような裁判基準が公刊されている理由としては,(もちろん事件毎の特色を踏まえた検討は必要ですが)損害賠償額の目安を示すことにより,日々発生する膨大な数の交通事故の損害賠償交渉・訴訟を円滑に処理することができるという点が挙げられると思います。迅速に被害回復が図られることは被害者にとっても大きなメリットがあり,交渉・審理の効率化・迅速化は,目指すべき1つのモーメントといえるでしょう。

しかし,物損事故に関しては,人損事故に比して,相対的に損害額が少額であるにもかかわらず,訴訟になるケースが急増し,また審理も長期化する傾向があるようです。この理由としては,自動車保険の弁護士費用特約が普及していることが挙げられたりします。弁護士費用特約とは,被害者が弁護士に依頼する際に発生する弁護士の報酬を,保険会社が代わりに負担してくれるという保険の特約です。このような保険(特約)があるおかげで,被害者は,弁護士費用を気にすることなく,弁護士に依頼することができ,他方で,相談を受けた弁護士としても,損害額が少額であるため費用倒れになりそうな案件でも,一定金額の弁護士報酬を確実に確保できるため安心して受任できるというメリットがあります。

もっとも,真偽のほどは不明ですが,被害者は弁護士費用を負担しなくても済むため,最近は,小さな物損事故でも,弁護士に委任して訴訟で徹底的に争ったり,あるいは,弁護士が報酬欲しさに被害者(相談者)に対して弁護士費用特約を利用して訴訟提起をするよう積極的に促したり,審理を意図的に長引かせたりしている(※弁護士報酬をタイムチャージ制で定めている場合,審理が長期化すればするほど弁護士報酬が増えます。),という噂話を聞いたりします。

実際,弁護士費用特約が商品化された2000年に簡易裁判所に提起された交通事故関連の訴訟は2422件でしたが,2015年は1万9471件で,約8倍に急増しています。また,平均審理期間は,2005年の4.1か月が,2015年には5.6か月に延び,簡易裁判所の判決に対し,地方裁判所に控訴する割合も約6倍に増加したとのことです。原因は何であれ,仮に,本来必要のない訴訟提起が増加したり,審理期間が必要以上に長期化しているのであれば,問題だといわざるを得ないでしょう。

審理の迅速化のためのモデル作成の動き

この点,昨日(平成28年4月14日)付けの読売新聞によると,「交通事故の当事者らが訴訟費用の心配をしないで済む弁護士保険の普及によって、全国の簡易裁判所で物損事故などを巡る訴訟が急増し、審理も長期化している問題で、最高裁は審理の迅速化のための対策に乗り出した。」とされています。

具体的にどんな対策をするのかというと,争点を絞り込みやすい訴訟の進め方や判決のモデルを作成し,不必要に訴訟を長引かせる主張や立証に歯止めをかけるのが柱で,最高裁は,このモデルを,裁判官や弁護士の参考資料になるよう,今年秋頃に報告書としてまとめる予定とのことです。

審理の迅速化は,被害者の損害の早期回復に資するものですので,最高裁には実効性あるモデルの作成を期待したい反面,この運用の一翼を担う我々弁護士としても,これまで以上に責任を持って交通事故案件に取り組む必要がありますね。

 

                     弁護士 千葉貴仁