メニューを開く  メニューを閉じる
2017/03/01 日比谷ステーション法律事務所の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください
Google+
ブログブログ

同性婚と平等な社会とは〜同性婚の憲法上の保障を認めた合衆国最高裁判決についての考察〜

2016.01.31

現在、出張でカリフォルニア州サンフランシスコに来ています。2月7日には、NFL優勝決定戦であるスーパーボールがリーバイス・スタジアム〔地元チーム49ers(フォーティナイナーズ)の本拠地〕で開催されるということで、現地はとても盛り上がっています。試合自体はもちろんのこと、スーパーボール中のハーフタイムショウも目玉の一つで、そのライブ中継は全世界で1億世帯以上が視聴するともいわれます。今年は、コールドプレイ(coldplay)が出演し、ビヨンセとの共演も予定されているそうですが、同性愛者人口の高いサンフランシスコのお膝元とあって、ファンの間ではゲイ・アイコンのシェール(Cher)をハーフタイムショウに出演させてほしいとの嘆願もあったようです。

そこで、今回は同性婚を合憲とするアメリカ合衆国最高裁判決を取り上げてみたいと思います。

異性婚と同様、同性婚が憲法上保障されているとする歴史的判決

2015年6月26日、米国連邦最高裁で、異性婚と同様、同性婚が憲法上保障されているとする歴史的判決が下されました。これまで全米では同性婚が認められる州と認められない州に分かれていましたが、判決では、合衆国憲法修正第14条上、各州は個人の婚姻する権利を尊重し同性婚を承認する義務があるとされ、これにより、同性婚が認められていない13州を含む、全米で同性婚が認められることになりました。

この判決が伝えられると、最高裁前の広場では、判決を歓迎する人々が同性愛者の権利運動の象徴色であるレインボーカラーの旗を振って、「Love has won」と叫び、それからしばらくの間、Facebook のプロフィール写真は、判決に賛同する人々の間でレインボーカラーに染まりました。また、判決を主導したケネディ最高裁判事は、判決文で「いかなる人の結合(つながり)も、結婚ほど深いものはない。なぜならそれは、愛、貞節、情熱、犠牲、そして家族の最も高い理想型であるからである。結婚という結合を創設するとき、二人の人間は、かつての彼らよりもさらに大きな存在になるのである。」と述べ、このような情感に満ちたケネディ最高裁判事の判決文も話題になりました。

21世紀の公民権運動

アメリカにおいて、最高裁判事が社会や歴史に与える影響の大きさは、以前ブログでも取り上げたとおりですが(→2014年4月18日付ブログ「最高裁判事暗殺」の理由は…!?)、アメリカの人々は最高裁判事をとても信頼し、正義を実現してくれると信じています。これは米国最高裁判事が、憲法の番人として、積極的に、かつ正面から、人権、差別問題に向き合い、社会改革をリードする姿勢を見せてきたからでしょう。

その象徴的な事件が、ブラウン対教育委員会事件(1954年)です。その当時、黒人に白人と同じ施設の使用を認めない人種分離諸制度は、「区別すれども平等」として最高裁判例で合憲とされていました(プレッシー対ファーガソン事件、1896年)。しかし、ウォーレン最高裁判事これを転換し、人種別学は合衆国憲法修正第14条の平等保護条項に違反すると判断しました。そして、司法の立場から1960年代の公民権運動を推進しました。同最高裁判事は、今でもアメリカ国民の多く(リベラル派)の人が尊敬し、歴史に名を残す判事となっています。

世論が大きく分かれる中で、「21世紀の公民権運動」とも呼ばれている同性愛者の権利保護に大きく踏み出す判決を下したケネディ米国最高裁判事は、ウォーレン元米国最高裁判事のように、歴史に名を残す判事となるかもしれません。

同性婚合憲判決に至るまでの経緯~分かれる世論~

アメリカの各州においては、これまで同性婚保護か否か、州によって異なる状況で、賛成派と反対派に世論が分かれていました。

意外かもしれませんが、実はつい最近まで、アメリカの多くの州には、同性間での性交渉は許されない犯罪として禁止する法律(反ソドミー法)がありました。これが違憲とされたのは僅か十数年前のことです。このような反ソドミー法を定めていた州の一つであるテキサス州において、同法違反で逮捕され有罪判決を受けた原告が最高裁まで争い、2003年に反ソドミー法は最高裁で違憲と判断されました(ローレンス対テキサス。今回と同じくケネディ最高裁判事が法廷意見を著したものです。)。

その後、同性愛をめぐる憲法上の論争は、同性婚の問題に発展しました。

今回の最高裁判決が下される直前の状況では、37州で同性婚が合憲とされていました。もっとも、合憲とされた経緯をみると、民主的手続によって積極的に同性婚を認める立法を有する州は、37州のうち、11州とワシントンD.C.だけでした。残りの26州は、法廷で争われ、裁判所によって、同性婚を禁じる法律が違憲無効とされ、強制的に同性婚を認めるよう変更されたのでした。

たとえば、今回の同性婚合憲判決からちょうど2年前の同じ日である、2013年6月26日、合衆国連邦最高裁で、遺産相続税の配偶者免除を巡り、婚姻を異性間に限定する旨の婚姻防衛法(Defense of Marriage Act, DOMA)第3条が違憲と判断されました(合衆国対ウィンザー事件)。このときも法廷意見を著したのは、ケネディ合衆国最高裁判事でした。

さらに、カリフォルニア州では、同性婚の推進運動、反対運動がともに活発で、両者は長く対立し、様々な訴訟や立法が行なわれてきました。最近の例では、同性婚を禁止するカリフォルニア州憲法修正民発議「プロポジション8」という発議が州民投票により成立しましたが、すぐに同性婚推進派が、「プロポジション8」が合衆国憲法違反であるとして、州を相手取り、連邦裁判所に訴訟を提起しました。第1審判決は、「プロポジション8」は合衆国憲法修正第14条に違反するとしました。州側は判決を受け入れ、控訴を断念したのですが(ちなみに当時の州知事は映画俳優としても有名なシュワルツネッガー氏でした)、訴訟の継続を望んだ「プロポジション8」の発議提案団体等が控訴しました。しかし、控訴審でも第1審判決が維持されました。そこで、最高裁への裁量上訴がなされたところ、最高裁は上訴人に訴訟適格がないとして訴えを却下したため、合衆国憲法違反とした連邦控訴裁の判決が確定したのでした(ホリングスワース対ペリー事件)。それ以降、連邦地裁では、半分以上の州の同性間の結婚を禁じる法律が無効にされてきました。

このようなことからも分かるように、同性婚は、アメリカにおいてもみなが簡単に賛同できることではありません。このような状況の中で、最高裁によって、同性結が憲法上保障されており、州はそれを尊重する義務があることを認める判決が下されたわけですが、9人の判事の意見も、賛成5対反対4に分かれました。判決文は100ページ(!)に及びます。日本経済新聞2015年6月27日夕刊は「同性婚合法、米で波紋」と伝え、それによるとブッシュ元フロリダ州知事は、州に同性婚の是非の判断を任せるべきだったとし、そのうえで「宗教と良心の自由を守るとともに、差別しないことが重要だ。」と述べているとのことです。

日本における動向~渋谷区のパートナーシップ条例~

日本でも、同性婚が憲法上、人権として保障されるというような判決が下される可能性はあるのでしょうか。

日本国憲法は、13条で、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政のうえで、最大の尊重を必要とする。」として、個人の尊重幸福追求権をうたっています。同性をパートナーにするという個人の選択の自由も「公共の福祉に反しない限り」最大限尊重されるといえます。また、14条1項では、すべての国民は「法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とされています。人種等ここで列挙された事由は例示的なものであって、必ずしもそれに限られるものではないため、ある人の性癖によって、合理的な理由なくその人を差別的取り扱いをすることは本条に違反するといえるでしょう。

他方で、憲法24条1項、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」とされています。このように、「結婚」は男女間でなければならないとされていることから、憲法上、同性間の婚姻は認められないとも思えます。

結婚は、当事者間の契約で、個人の選択の自由ですが、それにより当事者間で権利・義務が発生します。加えて、国家・社会が結婚を証明し、バックアップするという制度があり(教会、行政への届出・登録、結婚証明書の発行等)、これにより公的にその存在が認められます。さらに、国家が介入することにより創設される権利・義務があります(相互扶助義務など)。従来、生殖可能性のある異性間の結婚は、親子推定などのルールが必要であり、また、国家による法的保護に値するとされ、税制、社会保障、相続などの様々な面で優遇、促進されてきました。『どのような家族制度を法の保護の下に置くのが良いのか(国家国民の利益に合致するのか)』という価値判断が背景にあります。したがって、国家として同性婚を承認するというのは違和感を感じるという人、さらに、税制、社会保障、相続などの様々な面で優遇し、国家として同性婚を促進するとなると、行き過ぎではないかという考えも存在します。

しかし、国家・社会によって承認されない結婚であることによる差別、異性婚であれば得られるはずの当たり前の幸せが得られない、異性婚に認められている権利を受けられないということによる不利益といったことを見過ごすこともできません。渋谷区ではいわゆるパートナーシップ条例が導入され全国初の試みとして話題になりました。条文は渋谷区のホームページにアップされていますが(渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例)、条例の特徴は、区・区民・事業者による性的少数者への差別を禁止したうえで(本条例8条3項)、異性間の婚姻関係と異ならない実質がある同性カップルについて、そのパートナーシップ関係を区長が証明することができることとした点にあり(本条例2条8号、10条)、この条例が「パートナーシップ条例」などと呼ばれる理由になっています。親族と認められると、区営住宅、区民住宅への入居に便宜が図られたり、パートナシップ証明により、区内の医療機関での対応(面会・医療同意)、職場での対応(家族手当・慶弔休暇など)で、異性間の婚姻当事者と同様に扱われることが期待されています。この「パートナシップ証明書」の交付は2015年11月5日から始まっており、すでに複数のカップルに交付されているようです。少数派の保護という観点から、渋谷区で導入されたいわゆるパートナーシップ条例はとても興味深いものであり、今後、実際の運用を見守りたいと思います。

人間は生まれながらにして平等であるという思想は、フランス革命に始まりましたが、差別がなく、多様で新しい価値観に寛容で、少数者に優しい社会の実現は難しく、自分の中の差別、画一的な概念、先入観と戦っていかなければならないのであろうと思います。

日本法・ニューヨーク州法弁護士 川勝明子

Rainbow flag in Castro, SF

Rainbow flag in Castro, SF