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2017/03/01 日比谷ステーション法律事務所の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください
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「代理」の改正ポイント

2015.12.24

さて、今回は民法改正の「代理」について取り上げます。

民法上の「代理」とは

みなさんも、日常生活において、自分以外の誰かに頼んで、代わりに何かをやってもらうことがあると思います。しかし、これらがすべて民法に規定されている「代理」ではありません。民法の「代理」の規定が適用されるのは、他人に意思表示または法律行為(契約等)を行ってもらう場合に限られます。そのため、代わりに友達に宿題をやってもらうことも、本人の代わりに授業に出席して代返をしてもらうことも、替え玉受験も、さらには(文字に反して)代理出産ですら、民法上の代理ではありません(宿題・授業の出席・受験は自分でやりましょう)。もっとも、「お使い」は、本人から与えられた裁量に基づいて行う法律行為であれば、場合によっては、「代理」の範疇に入ってくるものもあるかもしれません。
われわれ弁護士が依頼者から委任を受けて、依頼者の代わりに相手方と交渉をしたり、法的手続を執ることは、「代理」になります(そのため、相手方や裁判所に提出する書面には「〇〇代理人弁護士〇〇」と記載します。)。

 

委任状

 

代理で問題が生じる場合

民法上、代理行為によって生じた法的効果が本人に帰属するためには、(1)授権(本人が他人に代理権限を与えること)、(2)顕名(「本人の代理です」と明示すること)、(3)授権に基づく意思表示または法律行為、の3つの要件を満たす必要があります。
これらのどれかの要件が欠けると、問題が起きるということは容易に想像がつきます。
例えば、他人が、本人から代理人を与えられていないのに、勝手に本人の代理人だと偽って、相手方との間で、本人の大切な財産を売る約束をし、相手方から先に代金だけ受領してしまった場合等です(このようなケースを「無権代理」といいます。)。
このような場合の法的処理を含め、民法第99条~第118条には、「代理」における法的効果の発生・帰属のルールが定められています。しかし、現行の規定では不明確な部分・不要な部分、さらには条文からは読み取れない判例法理が形成されている部分があり、これらについては、今回の改正において、以下のとおり、修正することになりました。
「代理」に関しては、技術的・専門的な部分の改正点が多く、一般の方にはわかりにくい部分もあるかもしれませんが、解説します。

代理行為の瑕疵

現行の民法第101条1項においては、代理行為の瑕疵は(本人ではなく)代理人を基準に決する旨規定されていますが、ここには、「代理人→相手方」の意思表示と「相手方→代理人」の意思表示が混在して規定されています。今回の改正では、規定の明確化のために、この2つは分けて規定されることになりました。

改正要綱案 第4 代理
1 代理行為の瑕疵-原則(民法第101条第1項関係)
民法第101条第1項の規律を次のように改めるものとする。
(1) 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
(2) 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

特定の法律行為の委託

現行の民法第101条2項では、以下のように規定されています。

2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

上記規定については、特定の法律行為の委託があれば本人が代理人に指図したことは要件ではないと解されているため、以下のとおり、上記太線部分は削除となりました。

2 代理行為の瑕疵-例外(民法第101条第2項関係)
民法第101条第2項の規律を次のように改めるものとする。
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

代理人の行為能力

現行の民法102条では、以下のように規定されています。

代理人は、行為能力者であることを要しない。

上記規定については、内容的な変更はありませんが、行為能力の制限を理由として代理行為を取り消すことができないという点を明確にするために、以下のとおりの文言に変更される予定です。また、本人が制限行為能力者であり、その法定代理人も制限行為能力者である場合には、本人保護のために、例外的に代理行為の取り消しを認めてもよいと考えられるため、以下の但書及び注のとおり、追加・修正がなされることになりました。

3 代理人の行為能力(民法第102条関係)
民法第102条の規律を次のように改めるものとする。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
(注1)民法第13条第1項に掲げる行為(被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為)に次の行為を加えるものとする。
民法第13条第1項に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。
(注2)民法第120条第1項の規律を次のように改めるものとする。
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

復代理人を選任した任意代理人の責任

「復代理」とは、代理人が、自己の権限内の行為を行わせるために、自分の名においてさらに代理人を選任して本人を代理させることをいいます。
例えば、われわれ弁護士も、依頼者から委任を受けた後に、事務所に新人弁護士が入所した場合などには、新人弁護士は当該案件について依頼者から直接委任を受けていませんが、新人弁護士に仕事を覚えてもらうために、裁判に一緒に出廷してもらうことがあります。その場合、依頼者から改めて新人弁護士への委任状を作成して頂くのも手間なので、通常、すでに委任を受けている弁護士が新人弁護士を復代理人に選任して(復代理人の委任状を裁判所に提出します)、一緒に裁判に出廷してもらうという処理をしています。

現行の民法第105条には、復代理人を選任した代理人の責任として、以下のように規定されています。

現行の民法第105条
1 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

上記の規定からすると、代理人の責任は、復代理人の「選任及び監督」に限定されており、また本人の指名に従って復代理人を選任した場合には、基本的には、責任を負わないことになっています。しかし、これでは、代理人の責任範囲が限定的であり、債務不履行の一般原則に委ねるのが適切である(上記の現行規定の責任以外にも、代理人に、本人との関係で債務不履行があれば責任を負わせるべき)として、改正要綱案では、現行の民法第105条は、以下のとおり、削除されることになりました。

4 復代理人を選任した任意代理人の責任(民法第105条関係)
民法第105条を削除するものとする。

自己契約及び双方代理

自己契約とは、同一の法律行為について当事者の一方が他方当事者の代理人となることいいます。また、双方代理とは、同一の法律行為の当事者双方の代理人となることをいいます。
これらは、代理人の裁量で法律行為の内容を決定できてしまう危険があり、その結果、本人あるいは当事者の一方の利益が不当に害されるおそれがあるため、現行の民法第108条で、原則として禁止されています。
しかし、同条では、上記のような形での「代理人となることはできない」とは規定されてはいますが、実際に代理人となってしまった場合の本人との法律関係は明示されていません。この点に関して、自己契約及び双方代理を無権代理行為であると判断した最高裁判決(最高裁昭和47年4月4日判決)があり、同判例法理を明文化するため、以下のような規定に修正される予定です。

5 自己契約及び双方代理等(民法第108条関係)
民法第108条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
(2) (1)本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

代理権の濫用

代理人が、本人から代理権を与えられ、客観的には代理権の範囲内の行為をしていても、それが本人の利益のためではなく、代理人自身や第三者の利益を図ることを目的としている場合を、代理権の濫用といいます。
現行民法には、代理権の濫用の場合の法的規律を直接定めた条文はなく、最高裁(最高裁昭和42年4月20日判決)は、代理権濫用行為については、心裡留保に関する民法93条但書を類推適用して、相手方が代理人の権限濫用を知っていたか、あるいは知りうべきであった場合に限り、本人からの取引の無効の主張を認めています。
もっとも、判例のように代理権濫用行為に民法93条但書を類推適用すると、同濫用行為は、法的には無効となってしまいます。無権代理であれば、本人の追認によって事後的に有効にすることができたり(民法第113条)、また相手方が無権代理人に対して責任追及することも制度上できますが(民法第117条)、代理権濫用行為を判例のように即無効としてしまうと、このような柔軟な制度(民法第113条~第117条)を利用することができなくなってしまいます(少し難しい話なのですが、厳密にいうと「無権代理→無効」ではなく、「無権代理→本人に効果不帰属→無効」という処理になります。)。
そこで、改正要綱案では、以下のとおり、代理権濫用の場合の要件は、判例法理の民法93条但書類推適用と同じものにしつつ、効果については、無権代理として扱うことにしています。

6 代理権の濫用
代理権の濫用について、次のような規律を設けるものとする。
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

代理権授与の表示による表見代理

表見代理とは、自称代理人の無権代理行為について、代理権限の外観に対する相手方の信頼を保護し、一定の要件のもとで、例外的に、法的効果を本人に帰属させる制度のことです。現行の民法では第109条、第110条、第112条が表見代理のルールを規定しています。
そして、本人(A)が、他人(B)に代理権を与えた旨を、相手方(C)に表示したが、実際には、AB間に代理権授与(授権)がなかったという場合、表示された代理権の範囲内でBがCとの間で行なった行為(無権代理行為)について、本人であるAに効果を帰属させ、ACを法的に拘束してもよいかという問題が、代理権授与の表示による表見代理と呼ばれるものです。この点については、現行の民法第109条が規定をしており、以下の7(1)のとおり、改正要綱案でも、条文は維持されることになっています。
もっとも、上記は、「代理権授与の表示あり+表示された代理権の範囲内で無権代理行為」が行われた場合ですが、「代理権授与の表示あり+表示された範囲外で無権代理行為」が行われた場合については、これを直接定めた規定は現行の民法にはありませんでした。そのため、従前は、民法第109条に、与えられた代理権を越える代理行為(権限外の行為の表見代理)について定めた民法110条が、重畳的に適用されていました。このような、表見代理に関する2つの条項の重畳適用が、以下の7(2)のとおり、改正要綱案で明文化されることになりました。

7 代理権授与の表示による表見代理(民法第109条関係)
民法第109条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。(民法第109条と同文)
(2) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば(1)の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

代理権消滅後の表見代理

1度与えた代理権が、例えば本人と代理人との間の委任契約が終了したことにより、消滅した後も、このような内的な法律関係は外部からは明らかではないため、このような代理権授与の外観を信じて取引をする相手方が出現することが考えられます。どのような相手方であれば表見代理の成立により保護に値するかについては、現行民法第112条に規定されています。

現行の民法第112条
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

しかし、現行の民法第112条における善意については、「代理権が存在しないことを知らなかった」ことではなく、「過去に存在した代理権が代理行為の前に消滅したことを知らなかった」ことであることを明確にするため、以下の8(1)の文言に修正される予定です。
また、代理権消滅後の表見代理で、かつ、消滅前に与えられていた代理権の範囲を越える代理行為がなされた場合には、民法第112条と民法第110条が重畳適用される扱いでしたが、以下の8(2)のとおり、これは条文上明確になる予定です。

8 代理権消滅後の表見代理(民法第112条関係)
民法第112条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
(2) 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば(1)の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

無権代理人の責任

無権代理人が、無権代理人であるにもかかわらず、本人の代理人として、相手方と契約をし、最終的に本人に法的効果を帰属できなかった場合、相手方は、当該無権代理人に、契約の履行または損害賠償請求を行うことができます。現行民法第117条にもその旨規定されています。

現行の民法第117条
1 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

しかし、現行民法第117条は、一見すると、相手方が無権代理人に対して同条に基づいて請求する前提として、相手方に「本人の追認を得ることができなかったとき」という要件の主張立証責任を課しているかのようにも読めます。しかし、「無権代理人が本人の追認を得たこと」は、相手方からの責任追及の障害となる事由ですので、無権代理人側で反論すべき事項(法的には「抗弁」といわれます。)と位置づけられるべきものです。そのため、以下の9(1)では、この点が明確化されています。
また、無権代理人の免責要件(現行民法第117条2項)については、無権代理人と相手方との利益衡量の観点から、以下の9(2)のとおり、一定の場合には、無権代理人に免責の必要がない旨規定されることになっています。

9 無権代理人の責任(民法第117条関係)
民法第117条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
(2) (1)の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
ア 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
イ 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
ウ 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

 

 

 

                                                   弁護士 千葉貴仁