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相殺と差押えの問題に関する改正点

2015.10.09


はじめに

現行民法511条は,差押後に,第三債務者が自己の債権者に対する反対債権を取得した場合に,これを自動債権とする相殺を禁止しています。

相殺と差押え

上記の図でいうと,Cは,Aが債権Yを差し押さえた後に債権Zを取得しても,債権Zを自働債権とする相殺はできないこととなり,債権Zについては相殺によることなくBから回収しなければいけません。


弁済期の先後と相殺

もっとも,現行民法では,差押えの時に自働債権の弁済期が未到来で,差押目的債権の弁済期は到来していたという場合に,第三債務者(C)が相殺を持って差押債権者(A)に対抗できるのかという問題についてその結論が明らかではありませんでした。

これについて,最高裁昭和45年6月24日判決は,「第三債務者は、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、自働債権および受働債権の弁済期の前後を問わず、相殺適状に達しさえすれば、差押後においても、これを自働債権として相殺をなしうるものと解すべきであ」ると判示しました。

すなわち,差押え時に債権Zの弁済期が到来していなくても,Cは,差押え後に債権Zを自働債権として,債権Yと相殺することができるということになります。

これは,そもそもの法文の反対解釈に合致することと,相殺の制度が,自働債権につきあたかも担保権を痛刷るにも煮た地位を与えられる昨日を営むもので,この制度に取り保護される当事者の地位はできる限り尊重されるべきであることを理由とします。

民法改正の要綱案には,この判例に合致する形で,以下のとおりの文案が盛り込まれました。


(1)差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。


差押え後に取得した債権と相殺

上記のような法文からすると,差押え後に取得した債権であれば,必ず相殺が禁止されるようにも思われます。
しかしながら,密接な取引関係にある当事者は,仮に差押え時に債権自体が発生していなくとも,互いに負うべき債権債務について相殺できるという合理的な期待を抱いていることが通常であり,これは保護に値すると考えられます。

そこで,民法改正の要綱案では,債権が差し押さえられた場合についても,差押え後に取得した債権が差押え前に生じていた原因に基づいて生じた債権であるときには,第三債務者は,その債権による相殺を持って差押え債権者に対抗することができるとされました。
たとえば,委託を受けて保証人になった者が,主たる債務者に対して負う債務にかかる債権が差し押さえられたという場合にも,当該保証人がその後に保証債務を履行して主たる債務者に対して求償権を取得した場合には,この求償権は差押え前に生じていた原因に基づいて生じていたといえるため,この求償権を自働債権としてする相殺を持って差押債権者に対抗することができることになります(最高裁平成24年5月28日判決参照)。

しかしながら,このような相殺が認められるのは,差押債務者と第三債務者との間にあった取引などを基盤とする相殺への合理的な期待を保護する趣旨であるため,第三債務者が他者から差押債務者に対する債権を買い取り,これを自働債権として相殺することまで是認するものではありません。
そのため,この点についても,民法の要綱案では但書で明記されました。


(2) (1)の規定にかかわらず、(1)の差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得した場合は、この限りでない。


おわりに

このように,民法改正の要綱案では,これまでの判例の流れ,学説,また,破産法等の関連法律に沿う条項が明記されました。