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転用型債権者代位権の明文化と実務への影響

2015.07.23

強制執行の準備のために債務者の財産を保全する制度として,債権者代位権という制度があります。これは,本来,権利を行使するかどうかは自由であるところ,債務者が自らの権利を行使しない場合,債権者が債務者に代わってこれを行使するというもので,債務者が財産を減少させるのを防ぐ機能があります。

 このように,債権者代位権は,本来強制執行の準備のための制度です。したがって,債権者代位権により保全される債権者の債権(「被保全債権」といいます。)としては,金銭債権が想定されていますが,強制執行の準備を目的としない,すなわち,金銭債権を被保全債権としない使われ方も,いわゆる“転用型”として,判例上認められています。今回の民法改正では,この“転用型”の債権者代位権が明文化される見込みです。そこで,本稿では,転用型債権者代位権についての改正案とその実務への影響について解説します。

 

“本来型”の債権者代位権

 転用型の債権者代位権について解説する前に,これと対比して分かりやすくするために,本来想定されていた使われ方,いわば“本来型”についてまず説明します。

 例えば,AがBに対してお金を貸しており,返済期限が過ぎたにもかかわらず支払いをしないところ,BはCに対してお金を貸しているという場合,Aが,Bに代わってBのCに対する貸金債権を行使するというのが,典型的なケースです。AがBのCに対する貸金債権を代位行使することにより,Bこの債権を行使しないため,無資力となり,Bから弁済を受けられなくなってしまうという事態を回避することができます。このケースのように,金銭債権を被保全権利とするのが,債権者代位権の適用場面として本来想定されているところです。

 

転用型の債権者代位権の具体例

 これに対し,判例で認められている転用型の債権者代位権としては,①登記請求権の代位行使と,②妨害排除請求権の代位行使の2つのケースがあります。

 ①は,不動産がA→B→Cと譲渡されたものの,登記がまだAにあり,Cとしては,自身に登記を移すためにまずA→Bと登記を移す必要があるところ,Bがこれに協力しないというケースです。判例は,CのBに対する登記請求権を被保全債権として,BのAに対する登記請求権を代位行為することを認めています。

 ②は,AがBから土地を借りているが,その土地をCが不法占拠しているというケースで,本来,AはBに対し,Cの妨害を排除して土地を使用させるよう請求できる賃貸借上の債権があるのみであり,Cに対して直接請求できないところ,判例は,Aが,BのCに対する妨害排除請求権を代位行使することを認めました。その後の判例では,対抗力のある賃借権に基づく妨害排除請求権が肯定されていますが,その前に債権者代位権の転用が判例により認められたケースとされています。

 

転用型の債権者代位権の明文化

 民法改正により,転用型の債権者代位権について,「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は,その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは,その権利を行使することができる」という規定が新設される見込みです。不動産の所有権を取得したことは登記しなければ第三者に対抗できませんので,前記①のケースでは,この規定により,CはBのAに対する登記請求権を行使することができます。

 また,「登記又は登録」という文言のとおり,不動産登記に限らず,登録が対抗要件とされている財産を譲り受けた場合にも,同様に譲渡人の請求権を譲受人が行使できることとなります。

 

実務への影響

 上記のように,「登記又は登録」とされていることから,不動産登記の場合に限らず,特許や商標といった知的財産権についても債権者代位権を使うことができるようになります。他方,今回の改正案では,上記②のようなケースでの債権者代位権については規定されていませんので,例えば,特許の通常実施権者が侵害者に対して特許権者を代位して差止請求や損害賠償請求をすることができるかといった問題については,直接の影響はないということになります。

弁護士 宮澤 勇作