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詐害行為取消の改正ポイント

2015.07.10

今回は,「詐害行為取消」について,改正のポイントを見ていきたいと思います。

そもそも「詐害行為取消」って何?

債権者は,その債務の引当てとなる責任財産を保全するために,債務者がその債権者を害することを知って行って法律行為の取消しを裁判所に請求することができます。これを詐害行為取消権といいます。

たとえば,AがBに対して1000万円を貸した場合,当然BはAに対し1000万円を返さなければなりませんが,Bが,Bの唯一の財産であった不動産を,Bの息子であるCに無償で譲渡してしまったとします。
このようなケースで,債権者であるAが自身の債権を保全するためにBC間の譲渡行為の効力を否認し,責任財産の維持を図る機能を有するのが,詐害行為取消権です。

詐害行為取消権は,すでになされた債務者の財産処分行為を取り消すものであり,債務者は第三者に与える影響が大きいため,この制度の運用に当たってはかなりの慎重さが要求されます。

「詐害行為」の後に被保全債権が発生した場合も取り消されるか?

上記の事例で,BがCに不動産を贈与したのが,AがBに対して1000万円を貸したよりも前の事情であった場合,AはBC間の譲渡行為の取り消しを請求できるでしょうか。
これについて現行民法には明文ありませんが,判例は,債権者の被保全債権は,債務者の法律行為(詐害行為)がされる前に発生したものでなければならないとし,今回の改正案でも,その旨が明記されることとなりました。
本件でいうと,Aがお金を貸した後のBがCに不動産を譲渡したという場合,AはBの不動産を含む財産を引当としてお金を貸したわけですから,BC間の譲渡行為を取り消す利益があるといえますが,
BがCに不動産を譲渡した後にAがお金を貸したという場合は,AはBC間に譲渡行為により減少したBの財産を引当としてお金を貸しているわけですから,保護に値するものではなく,BC間に譲渡行為間の譲渡行為を取り消すことはできないこととなります。

債務者が相当な対価を得た場合にはどうなる?

上記の事例で,AがBに対してお金を貸した後,BがCに対し相当対価で不動産を売却した場合,AはBC間の売買を否認することができるでしょうか。

これについても現行民法には明文がなく,「相当な対価を得ているのだから,債務者の財産を減少させる行為とはいえず,詐害行為にはあたらないのではないか」とも考えられるところです。
しかしながら,判例は,不動産を売却して消費・散逸しやすい金銭に換えることは共同担保の実質的効力を削減することになるから,原則として詐害行為にはなるという考え方を示しました。
もっとも,これが広範に認められることになると,債務者の取引相手が萎縮し債務者がなんらの取引もできなくなり,債務者の経済的危機を深刻化させることになりかねません。そのため,今回の改正案では,相当対価を得てした財産の処分行為につき,詐害行為取消の対象となる範囲を下記のとおり限定しました。


(第16-3)相当の対価を得てした財産の処分行為の特則
相当の対価を得てした財産の処分行為について、次のような規律を設けるものとする。
債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
(1) その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この3において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
(2) 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
(3) 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

そのため,改正案においては,BがCに対して相当対価で売却したような場合であっても,Bが対価として得た金員を隠匿等する意思があり,かつ,Cがそれを知っていたような場合には,AはBC間の売買を取り消すことができることとなります。


弁済は詐害行為となる?

それでは,Bは実はCからもお金を借りており,AがBにお金を貸した後にBがCに対して全額弁済したという場合はどうでしょうか。

これについては,BはただCにお金を返したというだけであり,詐害行為として取り消されるのはおかしいといえそうです。
判例は,一部債権者への弁済は原則として詐害行為になるが,一部債権者と通謀して他の債権者を害する意思を持ってされた弁済は詐害行為になるとしました。
そして,今回の民法の改正案では,倒産法上の否認権との整合性の観点から,詐害行為の対象となる弁済の範囲が以下のとおり明確化されました。

(第16-4)特定の債権者に対する担保の供与等の特則
特定の債権者に対する担保の供与等について、次のような規律を設けるものとする。
(1) 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
ア その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。(2)アにおいて同じ。)の時に行われたものであること。
イ その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
(2) (1)に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、(1)の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
ア その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。
イ その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

そのため,改正案では,BがCに対し期限が到来している債務を弁済した場合,1)それがBが支払不能の状態において行われ,かつ,2)BCが通謀してAを害する意図をもって行ったといえる場合に限り,詐害行為取消の対象となることとなります。


おわりに

現行民法では,詐害行為取消に関する条文は3条しかなく,判例の積み重ねにより,その法理が形成されてきた大変難解な分野でした。
改正要綱案では,詐害行為に関する条文が14条に増え,これまで曖昧だった詐害行為取消権行使の要件や効果が細かく規定されることとなりました。
上記の点以外にも,詐害行為取消に関する重要な改正点はたくさんありますので,またご紹介していきたいと思います。

当事務所では,詐害行為に関する紛争案件を数多く扱っておりますので,何かご心配なことがございましたらお気軽にご相談下さい。