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マタハラ判決と時代の流れ~最高裁平成26年10月23日第一小法廷判決地位確認等請求訴訟事件~

2014.10.24

最近めっきり寒くなってきましたね。秋冬物のお洋服を買いすぎてお財布まで寒くなっている女性もたくさんいるのではないでしょうか。
先日,ウィンドウショッピングをしようと新宿に出かけたのですが,いつの間にか某デパートのクレジットカードを新たに作成してしまい,結局4つの袋を両肩に抱えた状態で帰路につくこととなりました。来月の明細がおそろしく,仕事への意欲を新たにしたところです。

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さて話は変わりますが,昨日は「マタハラ判決」がニュースを賑わしていましたね。
私も早速判決の全文を印刷して読んでみました。
今日はそんなマタハラ判決について,私が女性として思ったことをツラツラと書いていきたいと思います。

事案の概要

細かいところは省略しますが,本件事案は概ね以下のとおりです。
上告人の女性は,理学療法士として被上告人の運営する医療・介護施設に勤めており,平成18年2月12日には患者宅を訪問してリハビリを行うチームの副主任に任ぜられ,業務の取りまとめを行っていました。
上告人は,平成20年2月頃,妊娠したため,労基法65条3項に基づき,身体的負担の小さい業務への転換を希望したところ,病院内で患者のリハビリを行う課に異動させたれました。
そしてこの際,被上告人は,上告人について副主任を免ずる旨の辞令を出しました(以下「本件措置」といいます。)。

その後,上告人女性は産休,育休を経て,被上告人に復職を希望したところ,以前いた患者宅を訪問してリハビリを行うチームの副主任には既に他の人が任ぜられ業務を行っていたことから,上告人は再び前の役職であった副主任には任ぜられないことを知らされました。
上告人はこれを不服として本件訴訟を提起したわけです。

ここで少し考えてみる

ここまでの事案の概要を読まれて,皆様はどう思いますか。
「妊娠・出産という出来事で女性がこのような不利益な処分を受けるのはおかしい」という方もいれば,
「産休・育休をとってその間は抜けるわけだから,副主任じゃなくなるのはしかたないんじゃないか」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。Yahoo!ニュースのコメント欄を見ると,この判決に疑問を呈する意見も多くありました。
本件は原審と最高裁で判断がわかれており,原審(広島高裁)は,本件措置について,人事配置上の必要性に基づいて裁量権の範囲内で行われたものであるとして,本件措置を有効と判断しています。
これについて最高裁は,以下のとおり判示し,本件を原審に差し戻しました。

判決内容

最高裁は,「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主は,原則として同項の禁止する取扱いにあたるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者について降格の措置を執ることなく経緯業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である」と判示しました。
その上で,本件においては,上記の「自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる道理的な理由」が客観的に存在するとはいえず,また,原審の判断は,上記「特段の事情」の有無について十分に審理し検討し判断をしていないため,法令の解釈適用を誤った違法があるとして,原判決を破棄しました。


雑感

最高裁は,軽易業務の転換を契機とする降格は,男女雇用機会均等法9条3項(以下「本条項」といいます。)に反し原則として無効であり,労働者が降格についてその有利不利を完全に理解した上でそれを承諾した場合か,使用者の方にその降格をさせずに軽易業務に転換をさせることに業務上の必要性から支障があって,かつ諸事情を総合考慮すると同条項に実質的に反しないと認められる特段の事情がある場合に限って,例外的に有効となるといっているようです。
これはつまり,何らかの役職につく妊婦さんが,「妊娠によりハードな業務ができないので,身体的負担の少ない業務に変えてください」と使用者にいった場合に,降格を伴うような異動は原則違法・無効であるということです。

前記のとおりこの判決について色々な意見があり,私も一晩考えてみたのですが,やっぱり最高裁の判断はこうあるべきなんだろうなぁというのが率直な感想です。
確かに,女性は産休・育休により一定期間仕事を休まなければならず,それによって会社は色々と人員の配置変更など対応を迫られます。
しかし,だからといって,妊娠して身体的負担の軽い業務に転換してほしいと希望した女性が降格させられるとすると,キャリアを維持したい女性は妊娠を望まなくなってしまいます。
また,女性が妊娠し身体的負担がかかっていても,降格をさせられると思うと軽易業務への転換を希望できなくなってしまいますよね。
まだ妊娠していない女性は,どんなに頑張っても妊娠したら降格させられるのねと思ったら,仕事のモチベーションも上がらないのではないでしょうか。
このような自体は,女性の社会進出を望まれる現代において,時代に逆行することになりかねず,最高裁が「軽易業務の転換を契機とする降格は原則無効」と明確に判断した本判決は,やはり画期的なものだと思うわけです。
男性や妊娠していない女性としては,なんで軽微な業務なのに役職もお給料も維持されるんだ!ずるい!と思う気持ちがあるのもそれはそれで理解できないわけではなく,最高裁も,会社の必要性とその降格が与える影響や労働者自身の知識や経験等の事情を総合考慮して,本条項に実質的に反しないと認められる特段の事情があれば有効となるとしています。
大変難しい問題ですが,1人1人が他者の立場にたって物事を考えていくことが必要なのかと思います。