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2017/03/01 日比谷ステーション法律事務所の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください
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免責判断の実情

2014.10.15

早いものでもう10月に突入しましたね。お鍋とビールのおいしい季節です。

お鍋 写真

先日発売の判例タイムズ1403号に,「東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情(続)」という平井直也裁判官の記事が掲載されていました。今日は,この記事に載っていた免責不許可の事例について,徒然なるままにああだこうだいっていきたいと思います。

免責とは?

免責とは,破産手続の終結後,破産者が一般的に既存の債務につき債権者からの追及を免れることができることをいいます。

自己破産をすれば債務が全てなくなる,と考えている人が多いですが,実は,破産手続は,債務を法律的に消滅させる制度ではありませんから,破産手続が終了しただけでは,借金を返済する義務を免れることはできません。

この義務を免れるためには,破産手続とは別に,借金の支払義務を免除する決定を裁判所からもらう必要があります。そのための手続を「免責」というのです。

しかし,破産手続開始,免責許可の申立てをすれば必ず免責されるというものではありません。免責不許可事由があり,かつ,裁量免責も許可されるべきではないと裁判所に判断された場合には,免責許可を受けられないこととなります。

免責不許可事由

免責不許可事由は,破産法252条1項に下記のとおり列挙されています。これらの根底にあるのは,免責というのは債権者の犠牲の上で債務者が受ける恩恵ですから,その恩恵を受けるのにふさわしくない行為をした者には,免責を許可するべきではない,という考え方です。
(1)債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
(2)破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
(3)特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
(4)浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
(5)破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
(6)業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
(7)虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
(8)破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
(9)不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
(10)次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
 民事再生法第二百三十五条第一項同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
(11)第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
ただし,上記の免責不許可事由に該当する行為があったとしても,当然に免責不許可となるわけではなく,多くの場合には,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して,免責を許可するのが相当と考えられる場合には,免責許可の決定をします。これを裁量免責といいます。

今回は,そんな裁量免責すら受けられなかった事案を見ていきたいと思います。

免責不許可となった事例その1

 ~弁護士に債務整理を委任後,キャバクラ通いやデート費用として約380万円を費消した事例~

1つ目からトンデモ事例です。具体的な事情はわかりませんが,おそらくこの破産者は,弁護士に「多額の借金を返しきれないため,債務を整理してほしい」と依頼したにもかかわらず,その後にキャバクラやデート費用で380万円を費消したというのですから,大変悪質な事例といえるでしょう。
さらにこの380万円は,勤めていたホストクラブのお客さんから得た500万円の一部という事情があるようで,そのお金を借金の返済に充てていれば破産をする必要性がなかったかもしれません。
このような人まで免責されるのであれば,債権者は怒ってしまいますよね。
この破産者の行為は,上記1号(財産の隠匿,損壊,その他の不利益処分)及び4号(浪費または賭博その他の射幸行為による著しい財産減少行為)にあたるとして,免責不許可となりました。

 免責不許可となった事例その2

~2005万円の腕時計があることを管財人に秘匿し,売却してその代金を隠匿した事例~

これもかなり悪質な事例です。かなり高額な資産を隠匿したわけですから,これで債務について免責を受けようというのはあまりに身勝手な行動です。しかもこれに加えて破産者は海外渡航許可(破産手続き中に海外に渡航する際には裁判所の許可が必要となります。)が却下された後に無断で出国したり,管財人から提出を求められた資料の提出を拒否したりしているわけですから,これは免責不許可とされてしかるべきだなと感じます。
この破産者の行為は,上記1号(財産の隠匿,損壊,その他の不利益処分)にあたるとして,免責不許可となりました。

 免責不許可となった事例その3

~破産債権者に対して無職で会えることを隠し返済が可能であると欺罔して210万円を借り入れた事例~

この破産者は,実は無職で返済のあてがあるわけでもないのに,ある債権者に対して「勤務先の賞与及び退職金で返済が可能である」と虚偽の事実を告げ,債権者を騙してお金を借り入れたそうです。
これは刑法上の詐欺罪の構成要件にも該当する行為であり,極めて悪質といえるでしょう。
しかもこの破産者は破産申立の際に免責不許可事由はないと記載した上で,このような虚偽の説明をした経緯について説明をしなかったとのことです。
この破産者の行為は,上記5号(詐術による信用取引)にあたるとして,免責不許可となりました。

 

雑感

免責制度は,債務者がどんなに働いても返しきれないような多額の債務を負ってしまった場合に,債務者を債務の重圧から解放して人生の再スタートを切るチャンスを与える制度です。
やむを得ない事情があったとしても,債務者が免責される分債権者には多大な迷惑をかけることになるわけですから,債務者としては,決して前述のような免責不許可事由に該当する行為をせず,新たなスタートに向かっていかなければならないということですね。