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最高裁平成26年7月17日第一小法廷判決 親子関係不存在確認請求事件について

2014.07.25

W杯も終わり,いよいよ夏本番という感じですね。暑すぎて夏バテ気味という方も多いのではないでしょうか。ビールを飲んだりハイボールを飲んだりして,楽しく夏を乗り切りたいところです。

さて話はがらっと変わりますが,7月17日に親子関係不存在確認請求事件の最高裁判決が出ましたね。この結論にはびっくりした方も多かったのではないでしょうか。今日はこの判決について考えてみたいと思います。

事案の概要

本件の事案の概要は以下のとおりです。

A(女)とB(男)は結婚していましたが,Aは,他の男性Cと交際をはじめ,性的関係を持つようになりました。

その後AはCとの子どもを懐胎しましたが,おなかの子の父親はBではなくCであるとわかっていたので,当時同居していた夫Bには,妊娠したことを告げず,黙って病院に行って,赤ちゃんDを出産をしました。(※同居していたのになんでBはAの妊娠に気がつかなかったのだろうか・・・と誰しもが気になるところですが,本件の主たる争点とは関係ないのでスルーしましょう。)

その後,Bは入院中のAを探しだし,Dは誰の子か問い詰めたところ,「2,3回しかあったことのない男の人」などと答えました(※同上)。そしてBは,DをAとBの長女とする出生届を提出し,その後Dを自らの子として監護養育しました。

その後,AとBはDの親権者をAと定めて協議離婚し,AとDはCと共に生活をするようになりました。

その翌年,Aは,Dの法定代理人として,「DとBは親子じゃありません!」といういわゆる親子関係不存在確認請求訴訟を提起しました。

図3

判決

これについての主たる争点は「夫と子の間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠等により明らかである場合に,親子関係不存在確認の訴えを提起し,親子関係を否定することができるか」ということです。すなわち,妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されるところ,これを否認するためには,夫からの嫡出否認の訴えによるべきものとされています。

本件では,DはABの婚姻中に懐胎した子であり,Bの子と推定されるため,上記の原則によれば,夫からの嫡出否認の訴えによらなければAとDの親子関係を否認することは難しそうです。しかし,DはBではなくCの子であることがDNA型鑑定により明らかになっていましたし,AとBは既に離婚し,Aが親権者となってDを監護養育していましたので,このような場合にまで,Bとの親子関係を否認できないとするのはおかしいのではないか?というのが,本件の問題意識です。

これについて最高裁は,上記のような事情があっても,DはBの子であるという推定が及ばなくなるとはいえず,親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないと判示しました。

これはつまり,いくら戸籍上の父と血縁関係がないことが明らかになっても,「妻が婚姻中に懐胎した」という要件を満たす場合には,子どもから親子関係を否認することはできないということです。(もっとも,婚姻中に懐胎した子であっても,妻がその子を懐胎すべき時に既に事実上離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には,夫の子とは推定されない(嫡出推定を受けない)こととなり,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係を争うことができるとされています。)

 

反対意見と私見

この判決は,子の身分関係の法的安定を保持するという民法の嫡出推定規定の趣旨を尊重するものですが,果たしてこれは妥当な結論といえるでしょうか。

最高裁判決にも複数の反対意見があり,白木最高裁判事は,「民法の規定する嫡出推定び制度ないし仕組みと,真実の父子関係を戸籍にも反映させたいと願う人情とを適切に調整することが必要になる」として,本件では,「夫婦関係が破綻して子の出生の秘密が露わになっており,かつ,血縁関係のある父との間で法律上の親子関係を確保できる状況にあるという点を重視して,子からする親子関係不存在確認の訴えを認めるのが相当である」と述べられています。私としても,反対意見の方が妥当な結論が導けるのではないかと考えています。上述のとおり,婚姻中に懐胎した子であっても,妻がその子を懐胎すべき時に既に事実上離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には,夫の子とは推定されない(嫡出推定を受けない)とされています。これはつまり,性交渉やその機会の有無を認定して婚姻の実態の存否を判断し,嫡出推定が及ぶか否かを判断することもあり得るということです。このような場合には親子関係不存在確認の訴えが認められ,DNA型鑑定で血縁上の父子関係がなことが明らかな場合には親子関係不存在確認の訴えが認められないというのは,均衡を欠くのではないか・・・と思うのです。

血縁関係のある父(本件ではC)との間で養子縁組を結べばいいじゃないか,と思われるかもしれませんが,法律上の実親子関係と養子縁組関係は,子にとっては心情的に全く異なるものでしょうし,養子縁組を結んでも法律上の父(本件ではB)との実親子関係が切れるわけではないため,親子であることによる法的効果(相続関係や扶養義務など)が生じることとなります。果たしてこれは適切でしょうか。

結び

色々と勝手な意見を述べましたが,子の身分関係の安定性という価値を重視した最高裁判決の多数意見にも合理性があるのはいうまでもありません。人それぞれ事情もあるでしょうし,男女関係のことに他人がとやかくいえるものでもないとは思いますが,不倫は色々な意味で不毛なので,しないのが1番・・・ということでしょうか。本件のDちゃんもしくはDくんは,法律上の実親子関係にとらわれず,健やかに育っていってほしいものです。