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ブログブログ

反社会的勢力を排除せよ!

2014.04.30

 弁護士の千葉です。

 

 4月23日に、新規登録弁護士向けの研修で、講師として、民事介入暴力対策に関する入門的なお話を30分程度させて頂きました。

 研修は全部で2時間で、私の講演の後、受講者(新規登録弁護士)には警視庁の作成したドラマ仕立ての30分程度のDVDを観て頂き、残りの60分程度で、委員会の先生方からDVDの内容について受講者に質問する形で解説がありました。

(2年前にこの研修を受講した時の自分のことを完全に棚に上げて言わせて頂くと)解説者の先生からの質問に対して、ちゃんと条文や基本的な原理・原則に基づいて正確に回答されている先生もいれば、少数ですがそうでない先生もいて、新規登録弁護士も様々だなぁと思いました(自分も日々研鑽を怠らないようにしなければと思いました)。

民暴入門/写真

「民暴入門」

民事介入暴力対策の重要性

 今回の研修は、新規登録弁護士向けのものですが、一般の方にも民事介入暴力に関する基礎知識を理解してもらいたいと思い、ここに少し書かせて頂きます。

 というのも、つい最近も芸能界・企業の暴力団関係者との「黒い交際」が各紙面を賑わせておりましたが、民事介入暴力はこのような一部の方に特有のものではなく、一般の方にも非常に身近な問題であり、知らず知らずのうちに暴力団関係者との関係を持たされていることがありうるとともに、実際にこの問題にどう対処したらいいのか困ってしまうだろうと思われるからです。

具体例(2つ)

 例えば、①自分の勤務先が、合法的な会社の経済活動を偽装する暴力団関係企業(いわゆる「フロント企業」といわれる会社です)との間で、そのような会社だと薄々知りながら取引をしていた場合、どうなるでしょうか?

 また、②暴力団関係者が飲食店で会合(出所祝い等)をする場合、この飲食店としては、「このお客さんが暴力団関係者だとしても、通常のお客さんと変わらず飲食をし、ちゃんとお金も払ってくれるなら特に問題はない」と考えて大丈夫なのでしょうか?

 この文脈からして上記の取引・対応に問題があることはわかると思いますが、どう問題があり、どのような不利益があるのかという点については、後述します。

 暴力団対策法の施行

 「民事介入暴力」というのは、よく省略されて「民暴(みんぼう)」などと呼ばれます(そのため,今回の研修も「民暴入門」ですし、私の所属している委員会も「民暴委員会」と呼ばれます)。

 故伊丹十三監督の『ミンボーの女』という映画も、その名のとおり、民事介入暴力を扱った映画で、暴力団対策法の施行と同時期に上映されたこともあり、大ヒットしました(とWikipediaに書いてあります)。

 暴力団対策法は、正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」ですが、省略して「暴対法」と言われたりします(なので、以下でも「暴対法」といいます)。

 この暴対法は、平成4年3月1日に施行されたのですが、それ以前は、暴力団が公然と暴力団の威力を利用して、市民から「みかじめ料」などを要求したり、債権取立や交通事故の示談等で市民生活に介入して「仲介料」を要求するなどして、資金を獲得していました。そのターゲットは市民だけでなく、企業にも拡大し、総会屋として株主総会を荒らしたり企業に対して恐喝を行うようになっていました(民暴委員会の模擬株主総会については、2013年3月10日付けのブログでも書かせて頂きました)。また、巨大化した暴力団が拳銃等を用いて対立抗争を繰り返し、暴力団事務所の周辺住民が巻き添えを食うという非常に危険な事態となっていました。

 このような状況を打破するために、暴対法が施行され、暴力団のうち、「その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団」として公安委員会が指定したものが「指定暴力団」とされ、指定暴力団は、計15類型の暴力的要求行為が禁止されるなど(後の改正により、現在は禁止対象行為は27類型あります)、様々な制約を受けることとなりました。

暴対法の効果

 平成4年に施行された暴対法は、指定暴力団に対して威力を発揮し、指定暴力団が表立って暴力的不当要求行為を行うことはなくなりました。

 しかし、指定暴力団は、暴対法の規制を免れるため、指定暴力団以外の者に依頼し、従来と同様の行為を行うケースが増加しました。

 そのため、規制の対象を拡大する必要が生じ、平成9年に暴対法が改正されました。この改正では、指定暴力団以外の者が行う暴力的要求行為は「準暴力的要求行為」とされ、この準暴力的要求行為を依頼すること自体も禁止されることとなりました。

 その後、暴対法は何度か改正され、様々な点で規制は強化されています。

暴対法の規制を逃れる者

 暴対法の施行・改正によって、表面的には暴力団だとわかるような活動は減少していきましたが、その反面、政治活動や社会活動を標榜して利権や資金の獲得を目指したり、先ほど触れたフロント企業や総会屋として暗躍したりしています。最近の暴力団の活動の特徴としては、ヤミ金融や振り込め詐欺など、経済化・偽装化・巧妙化・知能犯化・ボーダーレス化が進展していることが挙げられます。

 暴力団だけでなく、このような勢力全体を含めて「反社会的勢力」と呼ばれています(平成15年警察白書)。通称「ハンシャ」です。

 各都道府県の暴力団排除条例

  その後、全国的に暴力団を社会から徹底的に追放・排除しようという機運が高まり、①「暴力団を恐れないこと」、②「暴力団に資金を提供しないこと」、③「暴力団を利用しないこと」というスローガンのもと、全国各地で暴力団排除条例(以下「暴排条例」といいます。)が施行されてきました。

 平成22年4月1日に全国で初めて施行された福岡県の暴排条例を皮切りに、平成23年10月1日に東京都と沖縄県で最後に施行されたことで、全国47都道府県すべてで暴排条例の包囲網が敷かれたことになります。

 この暴排条例は、暴対法の条例版という位置づけではなく、暴力団関係者等の「規制対象者」(東京都暴排条例2条5号)に対して、一般事業者が利益供与を行うことも禁止しており(同24条)、これに違反した事業者は、公安委員会から勧告を受ける可能性があるだけでなく(同27条)、勧告から1年以内に利益供与を行った場合には、事業者名の公表という行政処分が課される可能性もあります(同29条)。

 名前が公表された事業者は、暴力団に利益供与を行っている団体として世間に知れ渡ることとなり、そうなった場合には、銀行からの融資が受けられなくなったり、また事実上、他の取引にも影響しますので、経済的に立ちゆかなくなる可能性があります。

先ほどの具体例について

 さて、さきほど挙げさせて頂いた2つの具体例についてですが、答えとしては、いずれも規制対象者の活動を助長しており、これらの者に対して利益供与をしたことになってしまうので、当該事業者は公安委員会の勧告や公表の対象となります。

 一見すると、飲食等の商品の提供に対して、規制対象者から正当な対価を得ているだけなので、「利益」の供与にならないのではないかとお思いになる方もいるかもしれません。

 しかし、条例上は、電気・ガス・水道の供給契約や応召義務(医師法19条1項)のある医師との診療契約など、契約の締結が法令上義務化されているもの以外の規制対象者との取引は、規制対象者の活動を助長するものであれば、原則として利益供与として暴排条例に違反することになります(東京都暴排条例24条3項)。暴力団を徹底的に社会から追放・排除しようという強い意志が窺える条例です。

取引相手が暴力団関係者だとわかったら

  もともと相手が暴力団関係者だとわかって取引をする人の方が圧倒的に少ないかもしれませんが、仮に、取引の当初から相手が規制対象者であることを知って取引に入ってしまっても、勧告の前に公安委員会にその旨を自己申告すれば、勧告の対象から除外されます(東京都暴排条例28条。適用除外)。

 「相手が暴力団関係者でも、通常の商売をしているだけだから特に問題はないだろうし、誰にもバレないだろう」と軽く考えていると、当該事業者としては、勧告や公表によって思わぬところで、(レピュテーションリスクを含め)極めて大きなダメージを被ることにもなりかねませんので、すぐに警察・公安委員会に相談しましょう。

 また、どこかから事前に得た情報で契約締結時にすでに相手が暴力団関係者だとわかっていた場合、その契約はお断りしましょう。私法においては契約自由の原則がありますので、相手方と契約しなければならない義務はありませんし、「なぜ契約しない!うちだけ差別するのか!理由を示せ!!」等と凄まれても、正当な理由のある契約拒否ですから差別ではありませんし、断る際にその理由を示す必要は全くありません。ただ、あえてカドの立つような断り方をするのは賢くないので、言葉遣いだけは工夫しましょう。

 暴排条例には、契約締結時の対応に関して、相手が暴力団関係者でないことを確認する表明・確約書や、暴力団排除条項の導入(努力義務)についても規定されています(東京都暴排条例18条)。これらの書面・条項は、暴力団との取引関係を遠ざける効果がありますし、取引関係に入っても、その後に暴力団との関係を断ち切るための強力な武器になるものです。これらは実務上、非常に重要なものですが、また別の機会にブログに書きたいと思います。