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8億円の熊手

2014.04.09

みんなの党の渡辺喜美の発言が,各種メディアで物議を醸しています。

「借りた8億円で熊手を買った」とのことです。

いかにもあやしい臭いがします。違法行為ではないのかと疑問に思う人が多いでしょう。

では,渡辺氏の借入行為が違法行為にあたらないか検討してみましょう。

 ※政治資金規正法第21条の2第1項だけを検討対象としています。渡辺氏が述べている次の発言だけを前提としていますので,真実とは異なる可能性があります。「平成22年の参院選を控えた時期に3億円、平成24年の衆議院総選挙を控えた時期に5億円をそれぞれDHC吉田嘉明会長の個人口座から私の個人口座に送金していただきお借りしました」

 政治資金規正法第21条の2第1項

政治資金規正法第21条の2第1項は,次のように規定します。

「何人も,公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし,政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。」

この規定に違反して寄附を受けた者は,1年以下の禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。

渡辺氏の借入行為は,この規定に違反しないのでしょうか。検討してみましょう。

公職の候補者

まず,渡辺氏が「公職の候補者」といえるのでしょうか。

渡辺氏が借入当時において衆議院議員だったとすると,「候補者」とはいえないように思えます。

しかし,法律はそう簡単に結論を決めることができないのが常なので,慎重に検討してみましょう。

「公職の候補者」の意味は,政治政治資金規正法第3条4項に定められています。次のとおりです。

「この法律において「公職の候補者」とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第八十六条 の規定により候補者として届出があつた者、同法第八十六条の二 若しくは第八十六条の三 の規定による届出により候補者となつた者又は同法第八十六条の四 の規定により候補者として届出があつた者(当該候補者となろうとする者及び同法第三条 に規定する公職にある者を含む。)をいう。」

下線部に注目してみましょう。「公職の候補者」とは,「公職選挙法3条に規定する公職にある者も含まれる」ということがわかります。

では,公職選挙法3条をみてみましょう。次のとおりです。

「この法律において「公職」とは、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職をいう。」

つまり,「公職」とは,①衆議院議員の職、②参議院議員の職,③地方公共団体の議会の議員の職,④地方公共団体の長の職を意味します。

ということは,「衆議院議員の職にある者」は,政治資金規正法の「公職の候補者」ということになります。

渡辺氏が現職の衆議院議員だとしても,「衆議院議員の職にある者」であり,「公職の候補者」ということになります。

ということで,渡辺氏は,「公職の候補者」ということになります。

寄附

では,借入金は,「寄附」にあたるのでしょうか。

「寄附」とは,一般的には募金やメセナ活動をイメージしますので,借入金は「寄附」にあたらないように思います。しかし,「候補者」の意味のように意外な結論もありえますので,慎重に検討してみましょう。

「寄附」の意味は,政治資金規正法第4条3項で,次のように定められています。

「この法律において「寄附」とは,金銭,物品その他の財産上の利益の供与又は交付で,党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」

ここでのポイントは,借入金が「その他債務の履行としてされるもの」かどうかです。

この点を明確にした判例はないのですが,次のように解釈することができるかもしれません。

①政治資金規正法第9条1項ロ及びチが「寄附」と「借入金」を書き分けており,寄附と借入金は別の概念である。

②借入金は,「金銭消費貸借契約に基づく貸付義務」という債務の履行としてされるものである。

③したがって,借入金は寄附にあたらない。

この解釈が正しいとすると,借入金は,政治資金規正法の「寄附」にはあたらないことになります。

結論

政治資金規正法は難しい。これに尽きます。

つづく