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2017/03/01 日比谷ステーション法律事務所の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください
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ブログブログ

身の回りの「欠陥」商品

2014.04.03

 弁護士の千葉貴仁です。

 最近、少しずつ暖かくなり、いよいよ春らしくなってきましたね。週末にジョギングしながらあちこちの桜のスポット巡りをするのがとっても楽しみです。

日比谷公園の桜開花写真

(日比谷公園の桜開花写真 H26.3.29)

 

 不安定なジョギングシューズで怪我?

 さて、先日、インターネットのニュースを見ていると、靴底を不安定にすることで、筋力向上などをうたったトレーニングシューズ「リーボック イージートーン」を履いて転倒し、重傷を負ったとして、横浜市在住の男性が、製造元のアディダスジャパン(東京都港区)に約2300万円の損害賠償を求めて横浜地裁に訴訟提起したというニュースがありました。

 イージートーン(Reebok EASYTONE)は、同商品が掲載されているリーボックのホームページによれば、「秘密は“バランスポッド”!! イージートーンを履いてショッピングに出かけたり、 通勤や通学に取り入れたり・・・。 毎日の一歩一歩が 効果的なエクササイズへと変化します。やわらかいソールがバランスボールの上にいるような、不安定感を作り出し、体が無意識にバランスをとろうとするため、脚やヒップの筋肉活動量が増えてエクササイズ効果を生み出します。」と説明されています。

 訴状によると、原告の男性は2012年8月、イージートーンを通常の靴と認識して購入し、9月にこの靴を履いて外出した際、階段でバランスを崩して転倒し、首の骨を折るなどの重傷を負い、約1ヶ月間入院し、筋力低下などの後遺障害が残ったとのことです。

 そして、原告はアディダス社に対して、①同社が欠陥商品を製造したという点(製造物責任法に基づく主張)、及び②店頭で購入者に対し靴の特徴について周知徹底させるのを怠ったという点、の2点をアディダス社の責任の法的根拠としているようです。

被告は誰か

 このニュースを見て素朴に思ったのは、リーボックの靴を履いて怪我したと主張しているのに、なぜアディダスを訴えたんだろうという点です。

 僕も休日には、時間を見つけては10km~50km程度のジョギングをするのですが、以前使用していたリーボックの「ZIG TECH」は3年程履き続けていましたし、気分転換のために別の会社のジョギングシューズが欲しいと思って、昨年、アディダスのジョギングシューズに買い換えたばかりでした。リーボックとアディダスは完全に別の会社でライバル関係にあるものだと思っていました。

 しかし、調べてみたところ、リーボック社は、2005年にアディダス社に買収されていたようで、現在は法人としては同じだということです。そのため今回問題となっている裁判では被告がアディダス社になっていたんですね。僕の気分転換は錯覚だったみたいです。

 

ジョギングシューズ×2

(Reebokとadidas)

 話を戻しまして、今回、原告は、アディダス社への損害賠償請求の法的根拠の1つを製造物責任法に求めているようです。

 本件事故は、階段でバランスを崩して転倒したということですので、通常の交通事故のように身近に加害者らしき人はおらず、あえて加害者は誰かと考えると、不安定な靴を作った製造元アディダスということになります。

 

製造物責任法とは

 製造物責任法は、平成7年7月1日から施行されている、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償責任について定めた法律です(同法1条)。

 そして、本件訴訟において、主な争点となりそうなのは、イージートーンに「欠陥」があったかという点だと思われますが、製造物責任法は、「欠陥」の定義について、以下のように定めています。

 「この法律において『欠陥』とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」(同法2条1項)

 イージートーンの安全性に関する具体的なデータや、イージートーンを使用して怪我をしたという他の事例の存否は明らかではありませんので、正確なことは言えませんし、今後の訴訟の帰趨についても当然わかりません。

 和解をして責任の有無は曖昧なままに終わるかもしれませんが、ニュースで報じられ、仮に裁判で少しでもアディダスの責任が認められるようなことがあれば、全国の他のイージートーン使用者からの訴訟提起があり得ますので、これを未然に防ぎ、また商品の安全性を消費者にアピールするためにも、アディダス社としては、今回の訴訟で請求棄却判決を得て、イージートーンに「欠陥」がないことを明確にする必要がありそうです。

「欠陥」の有無

 推測の域を出ませんが、本件で「欠陥」の有無についてはどのように考えられるのでしょうか。

 例えば、アディダス社が「バランスボールの上にいるような不安定感」とうたっているような、文字どおりの不安定性があり、普通に履いて歩いているだけで足を捻挫したり、バランスを失って転んだり道路に飛び出してしまうというような、日常生活に支障が出るような特異な性質のものであれば「欠陥」と言い得るかもしれません。

 しかし、「バランスボールの上にいるような不安定感」等というフレーズは、おそらく運動効果をPRするための宣伝文句にすぎないものと思います。またアディダス社というスポーツ製品に関する専門的知識・技術を兼ね備えた世界的大企業が、入念にテストにテストを重ね、シューズの特徴としての不安定性と商品としての安全性を兼ね備えた商品として自信を持って販売していると思われますので、これを「欠陥」と認定するのはかなりハードルが高いのではないかと、感覚的には思ってしまいます。階段でバランスを崩して怪我をする可能性という点では、男性目線から見ると、ハイヒールの方がよほど危なっかしい靴だと思いますが。

 いずれにしても、裁判所がどのように判断するのか注目ですね。

身近な製造物責任問題

 製造物責任法に関する法律問題は、今回はイージートーン使用者という限られた範囲の人の問題ですが、他の商品でも意外と我々にも起きうる身近な問題です。

 例えば、家で使用しているテレビ・暖房器具・冷蔵庫から突然出火して家が燃えた、自動車が運転中に発火・爆発して運転者が負傷した、餅やコンニャクゼリーを食べて喉に詰まらせて死亡した、サルモネラ菌の入った食べ物を食べて食中毒で入院した等、我々の身の回りにある物から被害が発生することは十分にあり得ます。大腸菌「O-157」の食中毒の問題も、訴訟では製造物責任法における「欠陥」の有無が争われました。

 餅やコンニャクゼリーを喉に詰まらせて死亡した事故などは、幼児や老齢の方が起こす場合が多いのですが、窒息死するような餅やコンニャクゼリーを作った製造元に原因があるのか、あるいはちゃんと切り分けたり噛んで食べなかった消費者の自己責任といえるかは、難しいところですよね(なお、1歳9ヶ月の子供がこんにゃくゼリーを食べて窒息死した事故に関して、裁判所は「本件こんにゃくゼリーは、製造物責任法上、通常有すべき安全性を欠いているとは認められない」と判示しています。大阪高裁平成24年5月25日判決)。

 コンニャクゼリーは最近はクラッシュタイプの形状になって販売されたりしていますが、餅はクラッシュタイプにできそうにないので、餅メーカーとしては、パッケージに注意書きを入れるだけで足りるのか、どうやったら消費者に餅を安全に食べてもらえるのか、悩ましいものがあるかもしれませんね。

1月3日の有楽町駅前での火事

 そういえば、今年の1月3日に有楽町駅前の商業ビルから出火し、東海道新幹線の運行やJR山手線の運行をストップさせた火事がありました。お正月の帰省ラッシュや初詣期間等と重なり、かなりの数の乗客に影響が生じました。

 僕も、当日、都心から鎌倉市の鶴岡八幡宮に初詣に向かうところに火事が直撃したので、各駅には乗客が溢れ、大混乱だったのを覚えています。

 日比谷ステーション法律事務所は、出火元のビルから目と鼻の先にある建物に事務所を構えていますので、火事そのものによる影響が心配されましたが、さすがに直接火が燃え移るほどの距離でもないため、全く無事でした。

 このお正月の火事は、一部報道によれば、出火した建物に入居するパチンコ店の水槽の電気配線がショートしていることから、出火元はこの部分だとされているようです。

 仮に、この電気配線が突然ショートして出火したのだとすれば、当該パチンコ店と配線メーカーとの間で、配線の「欠陥」の有無を巡って、製造物責任の問題が争われることになるかもしれませんね。