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社外取締役の設置義務~よそものの取締役はいらない?~

2014.03.10

弁護士の千葉貴仁です。

舞台俳優デビュー

 3月6日に、東京の3つの弁護士会の民事介入暴力対策委員会と公益社団法人警視庁管内特殊暴力防止対策連合会との共催で、東京ドームシティホールで「模擬株主総会」が開催され、私もセリフなしの取締役として出演させて頂きました。舞台俳優デビューです。

 今回の模擬株主総会のストーリーは、①私が取締役を務める会社の取引先の役員に暴力団関係者が就任したため、暴力団排除条項に基づいて当該取引先との契約を解除したところ、反社会的勢力と疑われる株主数人が自社の株主総会に出席し、取引解除の理由の説明を執拗に求めたり、また②自社の別の取締役が、酒席で知人からビジネスパートナーとして紹介された暴力団組長と同席している写真を撮られていたため、この写真を盾に、総会で「会社は反社会的勢力と関係を持たないと宣言しているにもかかわらず、暴力団組長と親交を持っている取締役を処分しないのはなぜか!」等と言って、会場内で暴れ回るというものです。

 みずほ銀行の反社会的勢力への融資問題も記憶に新しく、暴力団等の反社会的勢力への対応及び排除・撲滅活動は、社会的にも非常に関心の高い分野です。模擬株主総会には他にもいろいろな株主が登場しており、パネルディスカッションでは、これらの株主への実務的な対応方法が詳しく解説されていることもあり、会場の東京ドームシティホールは、企業の法務担当者、警視庁関係者、弁護士などでほぼ満席状態でした。

 模擬株主総会の途中では要所要所で小ネタや演者のアドリブが挟まれ会場内から大きな笑いが起きるなど、私が言うのもあれですが、弁護士が演じるものとしてはとても完成度の高い舞台だったと思います。

 私は、セリフが全くない取締役役で、総会の取締役席の一番端の席に座っているだけだったので、(申し訳ないのですが)全く緊張もなく、舞台上から、お客さんと同じ感覚で楽しませて頂きました(笑わないようにだけ気をつけました)。

社外取締役とは

 今回の模擬株主総会では、株主役から、会社に社外取締役がいないことも指摘され、その理由を質問されました。

 この質問に対して議長は、「当社としては、社外取締役を迎え入れること自体を否定しているのではありません」、「社外取締役として適切な人材は現時点では見つかっておりませんが、引き続き検討したいと思います」と回答しています。

 このような回答が適切なものといえるのかについては後述しますが、この「社外取締役」とはどのような取締役なのでしょうか?

 この点について、現在の会社法は、株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社業務執行役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものとしています(会社法2条15号)。

 しかし親会社の取締役は「社外取締役」の定義から除外されているため、『東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2013』によると、親会社を有する上場企業では、社外取締役の過半数が親会社出身であるとのことです。

 社内の生え抜きの取締役では、たとえ会社にとってプラスになる意見を持っていたとしても、それとは異なる意見を持っている他の多数の取締役に対して、独立した立場から取締役会内で物申すことはどうしても難しい場合もあり、その結果、取締役会が、会社の所有者である株主にとって不利益な方針を採ったり不透明な決定をすることもあり得ます。社外取締役には、このような事態を防ぎ他の取締役を監視することが求められています。

 しかしながら、上記のように親会社出身の取締役では、実際上、社外取締役としての独立性が保たれているのか疑問があります。そのため、平成25年11月29日に国会に提出された会社法改正案(以下「会社法改正案」といいます。)では、社外取締役の定義に関して、「親会社およびいわゆる兄弟会社の取締役等でないこと」という要件が加えられるということです。

社外取締役の設置義務?

 また、会社法改正案では、社外取締役の設置義務の導入は見送られましたが(経団連が導入に反対しています)、社外取締役を設置しない会社においては、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告や株主総会参考書類に記載しなければならないことが会社法上明記されることになるそうです(条文としては会社法327条の2として追加される予定です。)。

 これは、上場企業では社外取締役を原則として設置すべきであり、あえて設置しないのであればその理由を株主に説明しなければならないことを明文化するもので、英国流の「Comply or Explain」(遵守するか、さもなくば説明せよ)ルールを導入するものです。

 後述のとおり、この「相当でない理由」としては具体的な事情を示さなければならず、また、改正会社法の施行後2年を経過した時点で社外取締役設置義務の導入が再検討されることになっていますので(会社法改正案の附則25条)、現在、社外取締役を置いていない上場企業は社外取締役の導入を検討せざるをえない方向で法改正は進んでいます。

 なお、対象となるのは、正確には、「監査役階設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)のうち、金融証券取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、社外取締役が存しない場合」とされています。

「相当でない理由」としてどの程度の記載・説明が必要か

 さて、「社外取締役を置くことが相当でない理由」としては,どの程度の具体的理由が必要なのでしょうか?

 模擬株主総会で株主役の質問に対して議長役が答えた「社外取締役として適切な人材は現時点では見つかっておりません」という説明で足りるのでしょうか?また、これまでの株主総会実務では、「社外監査役が十分に機能しているため社外取締役までは不要」という説明が常套句でしたが、今後もこのような説明で通用するのでしょうか?

 この点に関して、会社法改正案は、各事業年度や当該時点における会社の個別事情に応じた記載でなければならず、「社外監査役が2名以上いること」だけでは「相当でない理由」としては不十分だということを明記する予定です。取締役と監査役とでは役割が違い、社外監査役では社外取締役の役割を代替できないので、当然のことを確認的に規定したものと考えられます。

 「相当でない理由」として具体的にどの程度の説明が必要なのかは現時点では明らかではありませんが、今後この点が争われる裁判例の中で徐々に明らかになってくると思います。上記のような紋切り型の説明は、現時点では許容されるとしても、少なくとも会社法改正案が施行された後は、通用しないことになりそうです(施行は平成27年となる予定です)。

 不十分な説明をするとどうなるの?

 会社側が「相当でない理由」を十分に示さなかった場合、総会や決議にどのような影響があるのでしょうか?

 この「相当でない理由」は、株主の質問を待つまでもなく事業報告の中で記載されることになると考えられ、その場合は決議事項ではなく報告事項という位置づけであることから、仮に不十分な説明だったとしても決議取消事由には当たらない可能性があります。

 しかし、株主総会参考書類は、株主総会に提出された議案に対する賛否を検討するための資料として株主に提供されるものであり、当該総会において社外取締役候補者を含まない取締役選任議案に対する賛否を検討するための資料であることから、株主総会参考書類上の「相当でない理由」の記載の不備は、記載の程度にもよりますが、招集手続に関する法令違反(会社法831条1項1号)として、取締役選任決議が取り消される可能性があります。

社外取締役をなぜ置かない?

 上場企業においては、毎年の株主総会毎に社外取締役を置かない理由を説明することに苦心したり、訴訟によって決議が取り消されるリスクを負ってまでして敢えて社外取締役を置かないという選択肢を採るよりも、経営判断としては社外取締役を置くことの方が断然合理的だと思います。

 平成25年の東証1部上場企業のうち社外取締役を選任する企業は62.2%で、平成24年の54.2%から8%も上昇しています。この背景には、社外取締役に関する規制を強化する会社法の改正もありますが、議決権行使助言会社大手のISS(Institutional Shareholder Services)が、総会後の取締役会に社外取締役が1人もいない場合に経営トップである取締役の選任議案に反対推奨するという議決権行使助言基準を平成25年から適用していることが影響していると思われます。

 上場企業としては、このような状況下でもなお「絶対に社外取締役を置かない!」「内輪の人間だけで経営したい!」という姿勢を貫くことは今後は極めて難しくなります。模擬株主総会では一言も話さない私のような取締役は許されますが、上場会社では改正会社法の施行予定の平成27年までの猶予期間中に、ズケズケとモノを言える適材の社外取締役を探し出す必要があります。